
高市早苗首相の「台湾有事の際の介入」発言による日中間の対立が激化している。トランプ米大統領は両国首脳とそれぞれ電話会談をする一方、直接の介入は避けているもようだ。そんななか、韓国は高官の訪日・訪中を予告しており、仲裁者として乗り出すのか注目されている。専門家は、直接的な介入を自制し、状況を長期的に見守る必要があると助言している。
トランプ大統領は11月25日(現地時間)、米フロリダ州へ向かう専用機で、24日の高市首相との電話会談について記者団に問われ、「非常に良い対話を交わした。我々はとても良い関係を維持している」と述べた。さらに「習近平中国国家主席とも非常に良い対話を交わした。あの地域は上手くいっている」と語った。
トランプ大統領は、習主席に続いて高市首相との電話会談に臨んだ。前者は習主席の要請により、後者はトランプ大統領の要請により進められた。
これに対し、高市首相はトランプ大統領が電話会談で最近の米中関係について説明したとし、「日米間の緊密な協力を確認できた」と評価した。一方、米中首脳間の電話会談で、習主席はトランプ大統領に台湾問題に対する中国の原則的立場を伝えたのに続き、トランプ大統領は「米国は台湾問題が中国にとってどれほど重要であるかを理解している」と答えたと中国国営新華社通信は報じた。
日中両国の主張通りであれば、トランプ大統領は両国対立について原則的な立場のみを伝え、距離を置く姿勢を見せている。むしろ、中国が強調する「一つの中国」原則、すなわち「台湾は中国の一部」という立場に同調するような態度を示した。また、「あの地域は上手くいっている」という発言から推測すると、日中間の対立について大きな懸念を示していないと解釈される。
両国の対立により、韓国は短期的には観光をはじめ、工業製品、食料品など各種分野で「反射的利益」を享受できるという見通しが出ている。しかし、中・長期的には北東アジア情勢の混乱が続く場合、韓国も被害を受けるのは避けられないという分析もある。
世宗大学国際学部のイ・ムンギ教授は「日中間の対立が構造化され長期化すれば、我々にとっては大きな負担となる。経済的には当面は得があるように見えるが、不安定性による北東アジア情勢の不確実性による(経済における)危険負担もさらに大きくなるだろう」と述べた。
一方、韓国政府は日中両国との接点を広げている。韓国のキム・ミンソク(金民錫)首相が来年1~2月中に日本訪問を検討していると伝えられている。また、パク・ユンジュ外務次官は12月中に中国・北京を訪問し、中国の馬朝旭外務次官と会談するとされる。
北東アジア情勢の当事者である韓国が、高官の相次ぐ訪問により仲裁者の役割を自任する可能性がある、という観測もある。イ・ジェミョン(李在明)政権の「国益中心の実用外交」の観点からも、北東アジアでの日中対立の固定化は国益に害となるためだ。
ただ、今回の両国訪問は仲裁者の役割というよりは、先の首脳会談を通じて合意された両国の協力策を具体化する契機となりそうだ。高官接触は、今回の紛争事態によって生じた北東アジア情勢の混乱の中で、リスクを避けるための一種の「ヘッジ」(危険回避)となるものと観測される。
これに伴い、韓国としては直接的な介入は避けるべきだというのが専門家の共通した分析だ。台湾問題は中国の「逆鱗」であるため、これに対する直接的な発言を避け、外交的な「修辞」を繰り返すのが最善の策であるとの提言も出ている。
グローバル戦略協力研究院のファン・ジェホ院長は「中国がこの問題から後退するのは容易ではない。日本が融和的なジェスチャーを取れば、それを中国が受け入れ、一旦収束させて次へ進む可能性が高い。韓国が仲裁の成果を出せるような問題ではないだろう」と述べた。
西江大学国際大学院のキム・ジェチョン教授は「韓国は今回の日中対立で両国いずれにも肩入れする発言を絶対にしてはならない。米国も関与しない状況で、韓国は飛び火しないよう注意すべきだ」と強調した。
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