
性交後72時間以内に服用することで妊娠を防ぐ「緊急避妊薬(モーニングアフターピル)」をめぐり、世界ではそのアクセス改善が進む一方で、韓国だけが依然として処方制を堅持している。他国で女性の性と健康の自己決定権を保障する動きが加速するなか、韓国では「乱用への懸念」が前提となり、制度的な壁が依然として高いままだ。
英国では国民保健サービス(NHS)が10月29日、全国約1万の薬局で緊急避妊薬を処方箋なし・無料で提供すると発表。従来は医師の診察を経るか、市販の場合は最大30ポンドを支払う必要があったが、今後は薬剤師との簡単な相談のみで入手可能となる。
NHSの女性健康責任者スー・マン博士は「これは1960年代以降で最大の性健康政策の変革。女性が自らの性と健康を管理することを可能にする歴史的措置だ」と強調した。英国薬剤師協会のヘンリー・グレッグ会長も「患者と薬局の両者にとっての大きな前進」と評価した。
韓国では依然として医師の処方が必要な状況が続いている。理由としては一般的なピルに比べホルモン量が10倍以上とされ、副作用や乱用の懸念が挙げられている。政府は現在も緊急避妊薬を「専門医薬品」に分類し、医療機関での診療・処方を原則とする。
だが、緊急避妊薬は名前の通り「緊急」の状況で必要とされる医薬品だ。診療までの時間的ハードルや、望まぬ性行為後に羞恥心から診療を避けるケースも少なくない。にもかかわらず、保健福祉省関係者は「応急状況であれば当然病院に行くべきだ。海外でも対面相談が必要とされている」と述べ、慎重姿勢を崩していない。
女性団体などは「性暴力被害者や青少年が迅速に服用できないことで、意図しない妊娠リスクにさらされている」と処方制の見直しを訴えている。一方、医学界では「無分別な使用は生理不順やホルモン障害を招く」として慎重な姿勢を求めている。
韓国で緊急避妊薬を使用する場合、診療費を含めて1〜3万ウォン程度の費用がかかる。性交後24時間以内に服用すれば約95%の避妊成功率があるが、72時間を過ぎると効果は85%以下に落ちる。既に妊娠が成立している場合は効果がない。
副作用としては、吐き気、頭痛、下腹部痛、疲労感、乳房痛、生理不順などが代表的で、月経周期が早まったり遅れたりすることがある。繰り返し使用するとホルモンの乱れや排卵障害、生理不順の慢性化につながるため、定期的な避妊薬としての使用は推奨されていない。
一方、毎日服用する低用量ピルは99%以上の避妊成功率を誇り、生理痛緩和やニキビ改善、子宮内膜がんや卵巣がんリスクの低減などの副次効果もある。ただ、服用初期には体重増加や気分変動、不正出血が起こることもあり、喫煙者や高血圧患者には医師の相談が不可欠だ。
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