
「何を買うか」ではなく「何を話すか」がショッピングの新基準になりつつある。韓国の流通業界で近年、顧客との対話を通じて商品を提案する「会話型人工知能(AI)」サービスが急速に広がっている。検索キーワードを入力する手間もなく、まるで店員と話すような感覚で買い物を完結できる利便性が人気の理由だ。
韓国の大手百貨店である現代百貨店はこのほど、これまで外国人向けに限定していたAIショッピングアシスタント「ヘイディ(Heidy)」のサービスを、韓国人顧客向けにも拡大した。生成型AIを活用し、各店舗やアウトレットのリアルタイム情報をもとに、ブランド、レストラン、ポップアップストア、展示会などをカスタマイズして案内する。
「ヘイディ」は単なる情報提供にとどまらず、ギフトの用途や予算、贈る相手の性別・年齢・好みなどを入力すれば、適切な商品とその理由まで具体的に提示する「コンサル型」の対話が特徴。こうした「個別対応型ショッピング」は、顧客の満足度と企業への信頼感を高め、ロイヤルカスタマーの獲得にもつながると評価されている。
このような会話型AIの導入は現代百貨店にとどまらず、流通業界全体に波及している。
ロッテグループの大型マート、ロッテマートでは2025年6月に「AIソムリエ」サービスを導入した。これは、顧客の過去の購入履歴や好みの味わいを分析し、その場で最適なワインを提案してくれる仕組みで、商品の予約・受取までワンストップで対応可能だ。導入以来、利用者が急増している。
食品・バイオ大手のCJ第一製糖も、2025年5月に「パイ(Pi)」というAI検索サービスを立ち上げた。「今日の夕飯、何にしよう?」と聞くと、保有商品から最適なメニューや製品を提示する。さらに新世界百貨店も「Sマインド」というAIショッピングアシスタントをアップグレードし、購入履歴や年齢・性別などをもとにしたレコメンド機能を強化している。
海外でもこの流れは顕著だ。米小売最大手ウォルマートは、AI開発企業オープンAIとのパートナーシップを通じ、チャットGPTと連携したショッピングサービスを構築中。顧客がチャット内で食品や日用品の提案を受け、そのまま決済まで完了できるシステムだ。
こうした流れを受けて、世界のAIリテール市場も急成長している。調査会社グランドリサーチビューによると、2025年時点で世界市場規模は145億ドルで、年平均23%成長を見込み、2030年には407億ドルに達するとされる。
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