2025 年 12月 3日 (水)
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「今の謝罪は得策ではない」…韓国・非常戒厳1年、当時の与党が謝罪に消極的な理由

韓国野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表(c)news1

「12・3非常戒厳」から1年を迎えるにあたり、当時の与党・国民の力の内部で「国民への謝罪」を求める声が強まっている。初当選議員から重鎮まで、党指導部に対する圧力が高まる中、チャン・ドンヒョク(張東赫)代表は「さまざまな意見を聞いている」と言葉を慎重に選びつつ、謝罪に消極的な姿勢を見せている。

議論の発端は11月20日、党内の再選議員らによる研究会「代案と責任」がチャン・ドンヒョク代表との面談で、代表就任100日と戒厳1周年となる12月3日に向けて「党の外延拡張に資するメッセージを発信すべき」と要請したことだった。実質的には、国民への謝罪を求める内容だった。

この動きを受け、いわゆる「改革派」に分類される議員はメディアに対し、「指導部が動かなければ、賛同する議員20人余りと共に個別に謝罪メッセージを発信する」とし、連判状を回す構えを示した。

3選以上の重鎮議員らも、ソン・オンソク院内代表との会合で「謝罪の必要性」を訴えたという。ある議員は「戒厳と党が直接関係あるわけではないが、当時の大統領は党員だった」として、「1年の節目に謝罪するのが妥当」と語った。

旧主流派である親尹(ユン・ソンニョル支持)系も表立っては発言しないが、「皆が同じことを言っているのだから、あえて言葉を重ねる必要はない」として、謝罪論に一定の理解を示している。

謝罪要求の高まりの背景には、党の支持率が停滞し、中道層の離脱が続くことへの焦燥感がある。来年の統一地方選を控え、党内では「何かしら行動を示すべきだ」との空気が広がっており、特に戒厳1周年を前にその動きが強まった格好だ。

検察が「大庄洞事件」の控訴を断念するなど、野党にとって逆風となる案件が相次いでいる中で、党指導部が保守支持層向けの強硬メッセージばかりを発信していることにも、不満が噴き出している。

一部議員は「多くの議員が、戒厳を阻止できなかったことへの負い目を感じているうえ、党勢が低迷している今は特に不安が高まっている」と語る。

統一地方選を控える自治体首長も焦っている。ソウル市のオ・セフン(呉世勲)市長は最近の国会行事で「100回謝ったっていいじゃないか」と吐露し、釜山のパク・ヒョンジュン(朴亨埈)市長も「謝罪を恐れるなら、保守の価値とは何か」と発言している。

こうした動きに対し、チャン・ドンヒョク代表は「意見を聞く」と述べ、12月3日までに議員ごとの意見を収集した上で決定を下す考えを示しているが、実際の指導部の認識としては「現時点での謝罪は実益がない」という判断があるようだ。

その理由として指摘されるのが、12月2日に予定されていたチュ・ギョンホ(秋慶鎬)前院内代表の拘束令状審査。令状は棄却されたものの、ここで謝罪と令状発付が重なれば、共に民主党の「内乱フレーム」に勢いを与える結果になるとの懸念があった。

さらに、12月中に終了する予定の「内乱特別検察」と「キム・ゴニ(金建希)特別検察」の捜査、ユン前大統領の裁判結果など、重要な局面が控えていることから、「今は動くべきでない」との声が強い。フレームから逃れられないタイミングで謝罪すれば、戦略的失点になりかねないとの判断だ。

別の関係者は「謝罪すれば、民主党に都合よく切り取られ、世論戦に利用される」と懸念し、「真の謝意が国民に伝わるのか、伝統的な支持層から反発を買わないかなど、多くの変数を検討せねばならない」と語った。

チャン・ドンヒョク代表は11月28日の大邱での演説で「結果的に多くの国民に混乱と苦痛を与えた。私はその責任を重く受け止めている」と述べたが、これを謝罪と受け止める向きは少ない。むしろ「党がしっかり戦えなかったからだ」と続けた発言は、支持層結集の意図が強かったとみられる。

ただ、党内外での謝罪要求が日に日に強まり、来年2月と見られるユン前大統領の一審判決を契機に、指導部が謝罪を「出口戦略」として活用するとの見方も現実味を帯びている。

(c)news1

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