
「すべての乳製品をやめろ。グルテンをやめろ。砂糖は絶対に食べるな」
特定の食品群を食べなければ体重が減り、腹部の膨満が消え、健康が良くなるという“抗炎症ダイエット”がSNSで流行している。しかし専門家は「一部に効果があるのは認められるが、ほとんどの人に大きな効果はなく、むしろ注意が必要だ」と警告している。
豪クイーンズランド大学のローレン・ボール教授とサザンクロス大学のエミリー・バーチ博士は9月22日付(現地時間)の学術メディア「The Conversation」に共同寄稿し、SNSで広がる“抗炎症ダイエット”の実態を検証した。
研究チームは、炎症を抑える目的でプロバイオティクスを摂取することには実際に一定の効果があり、これを裏付ける科学的根拠が複数発表されていると説明。2020年の無作為化対照試験を総合分析した研究では、プロバイオティクスが健常者だけでなく特定の疾患を持つ人にも血中炎症マーカーを改善する効果があると報告されている。
しかし、具体的にどの菌株をどれくらい摂取すべきかについては、さらなる研究が必要だと慎重な見解を示した。
一方で、牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品やグルテンを完全に断てというSNS上の助言については「科学的根拠に乏しい」と指摘している。
乳製品やグルテンが炎症を引き起こすのは、主にアレルギーやセリアック病など特定の疾患を持つ人に限られる。根拠なく無闇に食品群を除外すると、栄養の不均衡を招く恐れがある。
健常成人を対象とした複数の研究では、乳製品は炎症に悪影響を与えないか、むしろ抑制効果があることが分かっている。特にヨーグルトやチーズには炎症緩和に役立つプロバイオティクスが豊富だ。
また、グルテンをやめれば慢性炎症が減り、消化不良や慢性疲労が改善するという信念も広がっているが、それを実証する研究はほとんどない。むしろグルテンを含む全粒穀物を摂取し続けることで炎症が改善し、健康に好影響を与えることが示されている。
研究チームによれば、“抗炎症ダイエット”は慢性的な炎症が症状悪化や病気の進行に影響する疾患(多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、自己免疫疾患、関節炎など)の患者には一定の効果がある。ただし、患者ごとに安全でバランスのとれた食事を組むため、専門家の指導が必要だと強調した。
一方、健康な人が炎症を減らす目的で特定の食品群を完全に断つ必要はない。
研究チームは「加工食品を最小化した自然食品中心の地中海式食事法」を推奨。野菜・果物・全粒穀物・魚・オリーブオイル・ナッツなどをバランスよく摂れば、自然と免疫機能が強化され、SNSで流行する“食べてはいけないリスト”に従う必要はないとした。
また、食事のほかにも、十分な身体活動や睡眠、飲酒を最小限にし禁煙することも、炎症を抑えるのに有効だと助言している。【MONEYTODAY イ・ウン記者】
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