2025 年 11月 6日 (木)
ホーム社会「マイホームの夢」が遠のく韓国社会

「マイホームの夢」が遠のく韓国社会 [韓国記者コラム]

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「お金を貯めて、住宅価格が下がったら買え」。これは韓国国土交通第1次官を務めたイ・サンギョン氏が不動産政策を主管していた当時の発言である。

しかしイ・サンギョン氏自身はイ・ジェミョン(李在明)政権発足直後、保有していたマンションを売却し、5億ウォンの差益を得たうえで再びその住宅に賃借人として入居した。この行動は、単なる個人の逸脱ではなく、政策への信頼を損なう象徴として受け止められた。市場は、政府の数字ではなく「行動の誠実さ」で政策を評価する。

韓国政府が2025年10月15日に発表した「10・15不動産対策」は、「投機の抑制」を掲げて打ち出されたものだ。しかし、その規制網は投機勢力よりもむしろ住宅を必要とする実需層を厳しく締めつける結果となった。ソウル市全域と京畿道の12地域が「土地取引許可区域」に指定され、いわゆる「ギャップ投資(チョンセ=保証金=付き売買)」が封じられたが、同時に住宅購入希望者の融資や取引も事実上制限された。

持ち家を住み替えようとしていた一時的な二重住宅所有者たちは、賃借人の「契約更新請求権」により売却のタイミングを逃し、結果として譲渡税の重課を受ける羽目になった。チョンセを活用して住宅購入を試みていた若者たちにとっても、その選択肢は完全に閉ざされた。投機を防止するはずの規制が、結果的に若者たちの「住宅へのはしご」を蹴り落とす形となった。

現在、首都圏の主要な新築分譲団地は、ほぼ「自己資金勝負の戦場」となっている。例えば、ソウル・三成洞に供給予定の「レミアン・トリニワン」84㎡タイプの分譲価格は28億ウォンに達し、瑞草洞の「アクロ・ド・ソチョ」や盤浦洞の「オティエール・パンポ」も同水準だ。しかし、住宅担保貸出の上限は2億ウォンに制限されており、残りの金額はすべて自己資金で用意する必要がある。

政府は融資規制によって住宅価格の安定を狙ったが、結果として「十分な資金を持つ者しか申込みができない」構造を生んでしまった。いまや住宅抽選市場は、公平な競争の場ではなく、資本力の序列を示す場と化している。

その過程で、30~40代の実需層や若年層は徹底的に排除された。「結婚や出産を遅らせる理由の一つが住宅価格である」とする統計も、もはや驚くべきものではない。つまり「投機の抑制」という大義名分が、いつしか世代の希望を押しつぶす政策へと変質してしまった。

不動産市場は、規制ではなく「信頼」と「予測可能性」で動く。政策を設計する者たちがまず市場との約束を守るときにのみ、国民はその方向性を信じることができる。イ・サンギョン氏の事例が示すのは、単なる「道徳性」の問題ではなく、「政策の一貫性」が失われたとき、市場がいかに速やかに政府を見限るかという現実である。

政府には、住み替え需要に対応するための時限的な柔軟措置や、多住宅所有者に対する合理的な税制インセンティブなど、より現実的な代案が求められる。中長期的な供給戦略も必要だが、まず目の前の「取引の崖」を解消しなければ、若年層が手にできる物件はますます減っていく。投機抑制を名目とする規制が、将来世代の「マイホーム取得の機会」を再び奪うことがあってはならない。【news1 チン・ヒジョン建設不動産部部長】

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