
韓国の放送・映像産業における生成AI(人工知能)の活用が急速に進んでいる。映像制作から編集に至るまで、業務の生産性と効率性が向上している。
韓国コンテンツ振興院が3日発刊した「2024年放送映像産業白書」によると、2023年に国内の放送映像分野で生成AIを導入した企業の割合は、上半期には調査対象112社のうち4社(3.6%)にとどまった。しかし、下半期には調査対象100社のうち18社(16.4%)に増加し、放送・映像業界における生成AIの導入が加速していることが明らかになった。
◇生成AIの活用事例
放送映像制作における生成AIの活用が特に顕著なのは、映像・音声合成の分野だ。2022年12月から2023年3月にディズニープラスで配信されたドラマ「カジノ」では、主演のチェ・ミンシクが30代から50代までのキャラクターを演じた。この際、ディープフェイク(画像・音声合成技術)を活用した「ディエイジング(deaging)技術」(若返らせる技術)が用いられた。生成AIはチェ・ミンシクの30代の演技を学習し、若い頃の姿をリアルに再現した。
また、故人の姿を再現する技術にも活用されている。2023年12月に放送されたドラマ「サムダルリへようこそ」では、韓国の国民的司会者だった故ソン・ヘ氏の姿がディープフェイク技術で復元された。制作チームは、1994年に放送された『全国のど自慢』の映像を生成AIに学習させ、ソン・ヘ氏の姿を再現した。バラエティ番組では、今は亡き俳優がデジタルヒューマンとして登場した。
◇広告制作への応用
生成AIの活用は広告業界にも広がっている。2023年4月、バスキン・ロビンスはOpenAIのChatGPTを使ってシナリオを作成し、それを脚色して広告を制作した。同年6月には、鶏胸肉ブランド「アイムダック」がChatGPTで作成したコンテをもとにした広告を公開。8月にはロッテリアが生成AIで複数の広告音楽を制作し、消費者投票を通じて最終的な楽曲を決定した。
放送映像業界では、生成AIを活用した画像検索機能により、出演者ごとの登場時間の分析や、グローバルYouTube視聴データを解析している。編集の分野では、複数のカメラで同時に撮影した映像をタイムライン上で同期させる作業にAIを活用している。
また、コンテンツの海外展開にも生成AIが貢献している。あるバラエティ番組の制作会社は、著作権侵害を防ぐため、生成AIを活用してオリジナル音源に似たBGMを新たに作成して使用した。さらに、コンテンツ輸出前にターゲット国で流行しているキーワードを収集し、AIで分析することで、効果的なプロモーションコンテンツを制作している。
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