
前回まで韓国コスメを使った男性エステのプロセスの一部をルポした。体験者の米村耕一さん(52)は一連の施術をどのように受け止めたのか。本人がその体験記を寄せた。
◇皮膚のメンテナンス
顔のシミなど気にしたことはなかったが、妻に「いわゆる老人斑が増えてきたね」と言われた時には、さすがにショックだった。まだ52歳。「老人」になるのは早いのではないかという気がする。
とはいえレーザー治療でシミを取るとか、大げさなことはやりたくない。老化を多少は遅らせられるような皮膚のメンテナンスの方法を教えてもらえるところはないか。そんな気持ちでカウンセリングを受けた。
「ターンオーバーという言葉はご存じですよね」
ええ、もちろん。当然ながら目玉焼きの両面焼きのことだ。ホテルの朝食で時々出てくる。それくらいは知っている、と思ったら全く違う話だった。皮膚の細胞が生まれてから、はがれ落ちるまでの周期のことらしい。その周期は20代であれば30日程度だが、年齢を重ねるごとに長くなるらしい。
皮膚管理の要諦の一つが、このターンオーバーの仕組みを理解し、顔の皮膚の新陳代謝を促進してあげることだそうだ。
そのためにはまず顔の汚れを落とし、古い角質もそぎ取り、その上で水分をしっかり補給して、油膜でそれを保護しなければならない。
「外に出る時は日焼け止めも必須ですよ。記者の仕事は外に出ることが多いでしょうから」
日焼け止めは真夏、海やプールに行ったときに塗るものだと思っていた。普段から、それも真夏以外の季節も必要だという話は、なかなか衝撃だった。
「米村さんは頬骨がしっかり出ているので、そこに紫外線が当たりやすく、シミが目立ちやすくなる傾向があります」
確かに、黒々としたシミが広がっているのは頬骨の辺りだ。言われると一つ一つ納得がいく。
その後、顔の皮膚に突起物で打ち込む美容液の説明を受け、4種類のうちどれにしますかと聞かれたが、正直どうして良いのか全くわからない。
「つやつや感としっとり感、どちらを出したいですか」と聞かれ、ほぼパニックに陥った。老化を多少とも遅らせたいという気持ちがあるだけで、つやつやしたいわけでも、しっとりしたいわけでもないからだ。
ひたすら戸惑っていると、「米村さんの肌質に合わせて、こちらで組み合わせます」と言われてほっとした。私の肌質としては、乾燥気味で、きめが粗く、毛が多いためにカミソリ負けの炎症もあちこちに発生しているらしい。それがシミの原因になる可能性もあるとのことだった。
美容液選びの問題は解決したので、早速、施術に入る。

◇老化にあらがう
温かい蒸気を当てられながら、顔の汚れを落としていく。
そこでふと疑問がわいた。先ほどのカウンセリングの中で、皮膚のためには熱いシャワーを顔に当てない方が良いと教わったからだ。顔の皮膚にもともと存在する美容成分を洗い流してしまうということだった。33度以下の水をいったん手ですくって顔に当てる方が良いそうだ。
ということは、当然この蒸気も33度以下なんだろうか。それにしてはもっと熱い気がする。
「33度よりもっと熱いです。蒸気は良いんですよ。お湯を顔にぶつけて美容成分を洗い流してしまうのとは違います」
わかったようなわからないような、ではあるが、とにかく熱い蒸気にはサウナのような心地よさがあった。
その後は酸性の液体を顔に塗ったので、ひげそり後がやたらヒリヒリした。「良薬、口に苦し」。ヒリヒリするぐらいのほうが効果があるような気持ちにはなる。
その後の美容液の注入も、チクリチクリと痛かった。極細の繊維状のものの束を顔に押しつける。特に額や目の周りの敏感なところは、顔を一瞬しかめたくなるほどだった。
年を取って見える理由の一つが伸び続ける眉毛と鼻毛だ。同行の先輩と施術者が「鼻毛もなんとかしないといけない」と話しているのが、顔に美容液を充満させながら目をつぶっていても聞こえてくる。
ワックスをまゆ毛に塗られ、さらには棒に付けたワックスを鼻の穴に突っ込まれた。ワックスを剥がす時は身構えたが、意外と痛みは小さく、ベリッと気持ちよい音を立てて眉毛の一部と鼻毛は取れた。先輩は鼻毛が大量に付いた棒を見て「大漁だ」とウケている。
さらに顔パックも初体験。
定期的に半年ほど繰り返さないと効果はないそうだが、話のタネにと脱毛機器も試してみた。どういう原理かわからないが、バチンバチンと音を立てるものを顔に当てる度にチクッとする痛みが顔面を走る。「良薬、口に苦し」という言葉をもう一度、脳内で繰り返した。
超音波を出す機器で水溶性のジェルを顔中に塗り込み、施術は終了。自分で顔を触ってみると、心なしか弾性を増したような気がする。事後のカウンセリングでも化粧水による保水、ローションによる皮膚の保護を忘れないようにと念を押された。
整形手術はもちろん、「痛みがすごい」という噂の顔面への美容注射もしたくない。ただ、できる最低限のことで老化に多少なりともあらがえるのならば、やってみるのも悪くない。そういうきっかけになる経験だった。
50代にさしかかってきた同世代の団塊ジュニアのみなさん。一度試してみるのも良いかも知れませんよ!
(おわり)
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