韓国の大企業が今年に入り、相次いで米国現地への投資を繰り返している。一方で、今年11月の米国の中間選挙を控え、急ぐバイデン政権の「新アメリカファースト」基調とあいまって、韓国大企業の対米投資に対する悩みは深い。
◇厳しい世論
ある財界関係者はこの状況について、次のように打ち明けた。
「やむを得ないので、やっている。ただ、どの企業にとっても容易な決定ではない。韓国企業がこれだけ成長したのだと、“良い意味”にとらえる必要があるかもしれない」
米国の暗黙の投資要求に背を向けるのは難しい。世界的な物価高・高為替レート・高金利の影響で、米国企業まで投資縮小を秤にかけている。状況は極めて厳しい。
韓国国内には、半導体・バッテリーなどいわゆる未来成長戦略産業分野を、あえて海外に投資しなければならないのか――という厳しい世論もある。
バイデン政権発足後、韓国大企業が出した対米投資計画は既に300兆ウォン程度に上る。
サムスン電子は今後20年間2000億ドルを投資し、米国テキサス州に半導体工場11カ所を新設・増設する暫定計画案を米政府に提出している。
現代自動車は、米ジョージア州サバンナに55億ドルを投資し、2025年から年間30万台の電気自動車を生産する工場を建てる。
SKグループは、バイデン大統領とSKグループのチェ・テウォン(崔泰源)会長のオンライン会合で、米国で半導体などに計220億ドルを追加投資すると明らかにした。
こうした急激な対米投資拡大は、韓国輸出入銀行の資料からも確認できる。
それによると、バイデン政権発足前の2020年は151億6600万ドルだった韓国企業の対米投資が、昨年278億1900万ドルに増えている。今年第1四半期の対米投資額が87億2900万ドルと集計された点を勘案すれば、年間投資規模は昨年のレベルを大きく超えないものと見られる。
◇グローバルの不確実性
企業は表立って話すことはできないが、財界では自発的な決断とは考えることができない、という見方が支配的だ。政治・外交・経済関係で韓国と米国の特殊性が結合し、事実上、「背中を押されて投資決断を下した」ということだ。
企業がさらに困惑する点は、今年に入ってグローバル経営環境が悪化し、従来の投資計画まで見直し始めた状況だという点だ。
LGエネルギーソリューションは1兆7000億ウォンを投資して、今年第2四半期に米アリゾナ円筒型バッテリー工場建設に着工する予定だった。だが、建設計画を再検討している。
業界と学界では、米国の要求に合わせているため、米国現地投への資分野が半導体・バッテリーなど戦略産業に集中することについて、韓国国内の人材育成に及ぼす影響に対する懸念も出ている。
ただでさえ先端産業分野での人材養成問題が浮上するなかで、韓国企業がややもすれば米国の「小遣い」に転落しかねないという話だ。
業界関係者は「サムスンが2020年、250兆ウォンの投資計画案をめぐり、暫定計画という点を強調した。SKは29兆ウォンの投資案で半導体分野を『空欄』として残した。グローバルの不確実性がいつにも増して大きくなったため、戦略修正の可能性も念頭に置いているのではないか」と話している。
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