![](https://koreawave.jp/wp-content/uploads/2025/01/トランプ大統領「北朝鮮は核保有国」「観光で協力」発言…曖昧表現で国際世論かわす?-1024x640.jpg)
北朝鮮が連日、米国に向けた威嚇的なメッセージを発している。ただ、トランプ大統領に対する直接的な批判は一切避けている。これは、トランプ大統領の対北朝鮮対話の意志をくじくことなく、今後の交渉で有利な立場を確保するためだ。圧力を強めつつ、米国の反応を観察しようとする戦略とみられる。
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は11日、国防省報道官の談話を掲載し、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦「アレクサンドリア」が釜山に入港したことを非難。「徹底的に相応の力で牽制する」「対決構図から一歩も引かない」と強調し、米国を威嚇した。
米国の戦略資産の朝鮮半島展開には従来から敏感に反応していた北朝鮮だが、トランプ政権発足後、警告メッセージの発信頻度を増やしている。今回の談話もその流れの一環とみられる。
9日には、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が朝鮮人民軍創建77周年に際し国防省を訪問。米国を「朝鮮半島対決構図の根本的要因」と指摘し、「核戦力を含むすべての抑止力を加速度的に強化する」と述べ、既存の「核戦力強化」方針を再確認した。
さらに、国営朝鮮中央通信の論評では、米軍のB-1B戦略爆撃機が参加した米韓合同航空訓練および米韓空軍の訓練について「地域の緊張を高める無責任な行動であり、望まぬ結果を招くだけ」(9日)と非難。また、北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)による非核化要求に対して「時代錯誤の妄言」と切り捨て、「我々の核兵器は、わずかな金と交換できる取引材料ではない」(8日)と強調した。
3日には、外務省報道官名義で談話を発表。ルビオ米国務長官がインタビューで北朝鮮を「ならず者国家」と表現したことについて「主権国家のイメージを無断で傷つける敵対的言動であり、主権尊重と内政不干渉を原則とする国際法の理念に正面から反する重大な政治的挑発」と強く反発した。
このように、北朝鮮はトランプ政権発足以降、あらゆる形で米国を批判する一方、トランプ大統領本人に対する言及は一切ない。また、北朝鮮特有の過激な表現も控えめで、慎重に言葉を選んでいる。
これは、米国との対話や交渉を完全に拒否するのではなく、トランプ大統領との「個人的な関係」を最後の交渉カードとして残しておくための戦略とみられる。
韓国政府傘下のシンクタンク「統一研究院」のホン・ミン(洪珉)研究委員は「北朝鮮はトランプ政権に対して直接的な過激な非難は避けつつも、核戦力を活用した対応意志を示し、警告メッセージを発信し続けている。米韓合同軍事演習や米国の戦略資産展開に対する北朝鮮の反応は、今後の米朝対話に向けた条件設定の一環とも考えられる」と指摘する。
一方、北朝鮮がこのような警告を名目に、軍事的挑発に踏み切る可能性もある。特に、3月に予定されている米韓合同軍事演習や、米国の核戦略資産の展開が「挑発の口実」となる可能性が高い。
国防省報道官の談話でも、北朝鮮は「地域の安全環境を脅かす根本的要因に対する抑止行動を実行し、挑発者を懲罰するための正当な権利を躊躇なく行使する」と述べ、軍事行動の可能性を示唆した。
北朝鮮が対米威嚇を強めつつも、トランプ大統領への直接的な批判を避ける背景には、「圧力をかけながらも、交渉の扉は開けておく」というしたたかな外交戦略が透けて見える。
(c)news1