2025 年 1月 27日 (月)
ホーム特集現場ルポ「キャッシュレス」ソウルを「現金だけ」で歩いてみた…日本の45歳女性「七転八倒」ルポ (上)

「キャッシュレス」ソウルを「現金だけ」で歩いてみた…日本の45歳女性「七転八倒」ルポ (上)

「現金は使えない」とバスに乗車を拒否された落合さん。2000ウォンを握りしめていた(c)news1

現金?それって何?――未来の子どもたちにこんな質問をされたらどうする? あり得ないと思うかもしれないが、現金が終焉を迎える日はそう遠くない。2018年の統計によると、韓国で決済全体に占める現金の割合は14%に過ぎない。これは7年前のデータだが、それでも取引の際に現金を使う人は1割にとどまる。昨年の現金自動入出金機(ATM)の利用額は、18年11カ月ぶりの最低記録を更新した。現金を持つ高齢者や外国人のための国は存在しないのだろうか。

◇ノーキャッシュ、カードオンリー

日本人女性の落合ひろみさん(45)は、レジの前に立つたびに気まずそうな笑みを浮かべた。お金が足りないからではない。しかし、手のひらほどの小さなカードの代わりに現金を取り出すことが、どこかぎこちないからだ。日本では現金を使うのに慣れている落合さんだが、韓国では現金を差し出すたびに肩身の狭い思いをしているという。

昨年11月28日、記者はソウル在住2年目の落合さんとともに「カードを使わず現金だけでソウルを旅する」ことを試みた。彼女は食べたかったアップルマンゴーケーキを味わい、観光客に人気の「ホットスポット」のオリーブヤングにも足を運んだ。ただしルールは、1日中、現金のみで行動すること。結論から言えば、落合さんは「一部の地域を除けば、現金だけで生活するのは難しい」という現実を目の当たりにすることになった。

◇バス運転手の厳しい手のひら

その日はクリスマスまで約1カ月という時期だった。落合さんとソウル市永登浦区汝矣島にある百貨店のクリスマスツリーを見に行くことにした。彼女が選んだ移動手段は市内バス。待っていたバスの前扉が開くと、現金箱があるべき場所には「カード専用・現金のないバス」という赤い文字がはっきりと書かれていた。

「専用」という言葉に一瞬首をかしげた落合さんがバスに乗ろうとしたその時だった。2000ウォンを手にしていた彼女を見たバス運転手は、手のひらを差し出した。「ノー」。彼がかけたサングラスがその厳しさを一層引き立てているようだった。

運転手は慣れた様子で「ノーキャッシュ、カードオンリー」と英語で説明し、ドアを閉めて去っていった。記者と落合さんの間には数秒間、静寂が流れた。

落合さんは気まずそうに笑いながら、「まだお金を出してもいないのにダメだと言われた。こんなこと、本当に久しぶりなので少し気分が……」と口を濁した。

幸いにも、間もなく現金が使えるバスが到着した。バスに乗りながら、彼女は「友達も初めて韓国に来た時、同じことがあってバスを降りた。私もまだカードを使う習慣ができていなくて、バスカードを忘れて家に置いてきてしまうことがある」と照れくさそうに笑った。

こうした場合、原則としては口座振込を案内することになっている。しかし、バス運転歴6~7年のある運転手に聞くと、「お客様が外国人の場合は困る。口座振込を案内してもできず、とりあえず乗せて降りてもらうしかない」という回答だった。

「最近では日本人が韓国旅行にたくさん来て、インスタグラムにも全部載っている。たぶん、こんな体験をする(日本の)人たちは、初めて来た人か年配の方だと思う」

落合さんはこう振り返る。

同じ外国人でも、高齢であるほど「現金が通用する社会」を必要としていた。今すぐ思い浮かぶ彼女の母親も、カードを全く使わないという。

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular