
在韓米軍の役割が北朝鮮対策にとどまらず、東アジア全体を視野に入れた「戦略的柔軟性」の方向へと再編される可能性が浮上している。在韓米軍司令官が「韓国は中国本土と日本の間に浮かぶ島、あるいは航空母艦のような存在」と発言したことで、実務レベルでの具体的な動きが始まる兆しが出てきた。
ブランソン在韓米軍司令官は5月15日、ハワイ州で開かれた米陸軍協会(AUSA)の太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)での基調演説で「朝鮮半島以外の事態にも対応できる柔軟性を確保する必要がある」と述べた。
この発言は、ホワイトハウスや米国防総省レベルでの議論がすでに終わり、今後、具体的な変化が実行段階に入る可能性を示唆している。最大の想定シナリオは中国による台湾侵攻で、米軍が朝鮮半島に駐留する兵力をその対応に動員する構想が含まれている。
また、北朝鮮と中国がそれぞれロシアと関係を強めていることも、米国が在韓米軍の役割を再定義する動機の一つとなっている。今後、在日米軍や在韓米軍が「盾」となり、有事の際には先制対応の拠点にもなる可能性がある。
注目されるのは、この戦略的方向転換が具体的にどう反映されるかだ。現時点では、包括的な再配置計画が公に議論されているわけではない。
こうした中、在日米軍の変化が在韓米軍に波及する可能性も指摘されている。日本と米国は昨年7月、在日米軍を「合同軍司令部」へと格上げし、自衛隊との連携を強化する方針で一致した。これにより、戦時には在日米軍が日本国内の陸・海・空軍を単独指揮する権限を持つようになった。
従来はハワイのインド太平洋軍司令部が在日米軍の作戦統制権を持っていたが、今後は在日米軍が前線指揮機能を担うことになる。
このような在日米軍の変化は、在韓米軍にも影響を及ぼす可能性がある。たとえば、中国の台湾侵攻といった地域紛争が起きた場合、米国が在韓米軍を在日合同軍司令部の支援部隊として運用する可能性がある。
韓国国防研究院(KIDA)のユ・ジフン主任研究委員は「在韓米軍は機動性と作戦柔軟性において優位性を持つという認識が、米国側にあるようだ。将来的にインド太平洋地域で紛争が発生すれば、在韓米軍が後方基地の役割を果たす可能性を否定できない」と指摘した。
もし在韓米軍と在日米軍が連携を強めるのであれば、韓国内に配備されている兵器体系や人員構成にも変更が生じると見られる。現在の在韓米軍は主に北朝鮮を念頭に置いた陸軍中心の防御型編成だが、インド太平洋地域での他の事態にも対応する必要が高まれば、兵力は迅速展開型へ、兵器も攻撃型に切り替わる可能性が高い。
(c)news1