2025 年 5月 19日 (月)
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「なぜ彼らの送還が急務なのか」…北朝鮮住民帰還問題、人権と相互主義の試金石 [韓国記者コラム]

2013年11月26日、板門店を通じて北朝鮮に戻る北朝鮮住民=韓国統一省(c)news1

「北朝鮮の漂流民が今すぐ帰れることがそんなに重要なのか?」。韓国で最近、ある野党国会議員室の関係者から発せられた一言が議論を呼んでいる。

この質問のきっかけは、今年3月7日に黄海で漂流し、北方限界線(NLL)を越えて韓国側に流れ着いた北朝鮮住民2人の存在だ。彼らは「元の生活圏に戻りたい」という明確な意思を示したが、5月15日現在、すでに70日間も北朝鮮への送還は実現していない。

同様のケースの中では最長となるこの遅延に、「なぜ彼らの送還が急務なのか」という根本的な問いが投げかけられている。

同時に提示されているのは次の問いだ。「北朝鮮に拘束されている韓国人は、なぜすぐにでも帰ってくるべきなのか?」

韓国には、10年以上前に北朝鮮で拘束された家族の消息を求め、国内外を奔走している人々がいる。

例えば、2013年に拘束されたキム・ジョンウク氏、2014年のキム・グクキ氏、チェ・チュンギル氏らの生死すら、北朝鮮側は明かしていない。

このような状況を「他人事」として片づけることは簡単だが、「人」としての普遍的な価値観に立てば、南北を問わず、誰であっても尊重されるべき人権と自由意志の問題である。

統一省の資料によれば、2010年以降、海上で偶発的に韓国側に漂着した北朝鮮住民は、平均して6~7日以内に送還されてきた。南北交流が比較的活発だった2017~2022年には平均3.3日と、さらに早期の対応が可能だった。

今回は、韓国政府が国連軍司令部を通じて北朝鮮に意思を伝えたものの、いまだに何の応答もない。これは北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が提唱する「敵対的二国家論」による、南北断絶政策の一環とみられている。

今後も北朝鮮住民が帰還を希望し続ける限り、韓国内の保護施設に「宙ぶらりん」の状態で長期滞在するという前例のない事態が続く可能性がある。

政治の世界では、状況や政権によって判断が変わることもある。しかし、人権の領域では、体制の違いを理由に自由意志が無視されるなら、それは明確な人権侵害である。

韓国政府が北朝鮮住民の送還問題を放置すれば、逆に「北朝鮮に拘束されている韓国人の即時送還」を主張する声にも説得力を欠くことになりかねない。

互いの主張に耳を貸さないまま放置された人命や尊厳は、やがて交渉のテーブルにすら乗らなくなる。

今こそ、制度や政治の論理ではなく、「人の命と尊厳」に焦点をあてた解決の道が求められている。【news1 ユ・ミンジュ記者】

(c)news1

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