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韓国社会で政治対立がオンラインを超えて職場や日常生活にまで広がっている。特に最近のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾問題を巡り、職場内の会話でも政治が主要な話題となっている。
ソウル市恩平区(ウンピョング)在住の会社員、チョンさん(27)は、勤務する汝矣島(ヨイド)の証券会社で、最近政治をめぐる激しい言い争いが起きたと話す。
「上司の一人が『ハン・ドクス(韓悳洙)首相が弾劾されたのは本当に良いことだ』と発言したところ、別の上司が『何が良いことなんだ?』と反論し、口論になりました。私は下っ端なので『お前はどの党を支持してるんだ?』と聞かれるたびにストレスです」と吐露した。
韓国の政治対立はこれまでオンライン中心だったが、最近の弾劾政局の影響でオフラインの職場でも政治議論が激化している。ある調査では、ホワイトカラー職の有権者が旧正月の連休に知人と話した話題のうち、「政治」が57%で最多だったという結果も出ている。
さらに、集会に参加したことを理由に職場で不当な扱いを受けたという通報を受け付ける「通報センター」まで登場した。京畿道果川市(クァチョン)からソウル市松坡区(ソンパ)に通勤する新入社員のイさん(27)も、職場で同様の経験をしている。
「お昼休みに職場の話題がほぼ『ユン大統領の弾劾』なんです。私は中道保守ですが、上司がほぼ進歩(革新)派なので、左派のふりをしてます。さらに『退勤後、一緒に進歩派の集会に行こう』と誘われました」
また、SNSの投稿が問題視されるケースもある。仁川(インチョン)の幼稚園に勤務するヤンさん(26)は、弾劾賛成集会に参加した写真をプロフィール画像に設定したところ、すぐに削除せざるを得なかった。
「同僚たちから『そんな投稿をしたら保護者が苦情を言うかもしれない』と言われました。プライベートな投稿まで検閲されるようで、不快でした」
市民団体「職場パワハラ119」は、弾劾政局が職場に影響を及ぼしていることを受け、上司が集会参加を理由に不当な扱いをするケースなどの通報を受け付けている。
職場のオンラインコミュニティでは「政治の話でストレスを受けている」という投稿が目立つ。
京畿道水原市(スウォン)のIT企業に勤めるAさんは「上司が会議をしようと言っておいて、50分間ずっと政治の話をした。普段から右派YouTuberの動画や写真を送りつけてくるので、本当にストレス」と書き込み、多くの共感を得た。
また、韓国の世論調査会社「エンブレインパブリック」などが実施した全国指標調査(NBS)では、ホワイトカラー職の57%が旧正月連休中の主な会話テーマとして「政治」と回答しており、職場内の政治議論が活発化している現状を反映している。
職場での政治対立が激しくなった背景には、無党派層の減少と、与党・野党の支持層の結束が影響していると分析されている。
今月のNBS調査によると、無党派層は昨年10月に29%だったが、2月には14%まで減少。一方、与党「国民の力」の支持率は39%、野党「共に民主党」は37%と接戦となっている。
(c)news1