20代の大学生、Aさんは好きなアイドルと1対1でビデオ通話するために、熱心にアルバイトをして稼いだお金250万ウォンをアルバム購入に費やした。当選確率を上げるための一種の「投資」だったが、当選者の一覧にAさんの名前はなかった。
100枚以上のアルバムを抱え込むことになったAさんは、「ファンサイン会が非対面になるにつれ、『ボーダーライン』もどんどん高くなっている」と嘆いた。
◇新たな収入源
デジタルプラットフォームの多様化に加え、新型コロナウイルス感染が長引いたことで、エンタメ業界はファン対象のイベントの多くを非対面に切り替えた。対面イベントが困難である以上、やむを得ない措置だと業界側が主張する一方、ファンの金銭的負担がどんどん膨らんでいるという指摘も出ている。
エンタメ業界によると、新型コロナ感染拡大初期の2020年上半期を起点に、オンラインプラットフォームを中心とする非対面イベントが本格化したという。以前から、BTSの国内コンサートを全世界に向けて有料ストリーミングするなどの非対面サービスはあったが、こうした傾向は同年3月以降にますます強まった。
Aさんの事例のような「ビデオ通話ファンサイン会」は、対面の催しをオンラインに移したもので、特定のプラットフォームで2~3分の間、ファンがスターと1対1でビデオ通話ができるイベントだ。アルバムを購入するごとにファンサイン会の応募券が1枚ずつ付いてくる。
芸能人と個人的なメッセージをやり取りできるプラットフォームも登場した。「DearU Bubble」は毎月4500ウォン課金すれば、好きな1人と交流できる。ただ、スターからの返信を100%受け取ることができるというわけではない。類似プラットフォームの「PocketDols(ポケットドルズ)」は、スターにメッセージを1回送るたびに約2500ウォンを課金する必要がある。
エンタメ業界としては、対面イベントの開催が困難なため、新たな収入源を必要としている。ある業界関係者は「非対面イベントから収益を得るしかない状況だ。中小事務所や新人はさらに居場所がなく、非対面を積極的に活用している」と解説している。
◇「カネがかさばりすぎる」
一方、ファンの側は、有料イベントが急増していることを受け、以前より「オタ活」に必要なおカネがかさばると不満を漏らす。
「以前なら、こんな莫大な出費をしなくても、ファンが参加できる公開放送、イベントがたくさんあった。今はもう、お金をかけないとアイドルを好きではいられない。公式カフェなどでのアーティストとのコミュニケーションも、有料であることが当たり前になった」。アイドルファンである20代のチョンさんはこうため息をつく。
昨年、ある芸能事務所がアルバム発売前に「未発売曲の公開記念ファンサイン会」を開いた。この時、「あとで発売されるアルバムを、事前に購入せよ」という申し出もあった。チョンさんは「商品(アイドル)も人間で、消費者も人間だ。度が過ぎるマーケティングを目の当たりにすると、力が抜ける」と失望感を語った。
出費が増える半面、満足感はむしろ減っているという声もある。プラットフォームによってはエクスポートの安定が図れず、購入したとしても一定期間を過ぎると動画をアーカイブできないことが残念だ、という意見だ。
アイドルファンのBさん(20代)は「なんか“イメージ”を買っているようなもので、消費しているという実感が湧かない」という。
◇合理的な消費を
こうした状況について、専門家は、非対面が主流になることは回避できないが、過度に利益を得ようとする傾向には警戒する必要があると指摘する。
大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は「事務所の商業主義的な試みに、ファンが葛藤を抱いている。最近のファンダムの雰囲気は、過去のように、のめり込むだけのものではない」として、合理的な消費の必要性を説く。
同じく大衆文化評論家のキム・ホンシク氏は「芸能事務所が無理に(有料)サービスを提供すると、アイドルのブランド価値がむしろ下がる可能性がある」として、高額な価格設定を是正すべきだと指摘する。
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