2025 年 2月 22日 (土)
ホーム社会「うつ病は他人を傷つける病気ではない」…韓国・小学生切りつけ死亡事件で広がる偏見に専門家が警鐘

「うつ病は他人を傷つける病気ではない」…韓国・小学生切りつけ死亡事件で広がる偏見に専門家が警鐘

12日午後、大田のある小学校の前に置かれた死亡児童を追悼するための人形や花、お菓子など供え物(c)NEWSIS

韓国・大田の小学校で1年生の児童を刃物で死なせた教師の「うつ病」の病歴が明らかになったことを受け、一部ではうつ病に対する否定的な認識が広がっている。教師の採用時にうつ病の病歴を確認すべきだという声も出ているが、専門家は「うつ病は自分を傷つける可能性はあるが、他人を攻撃する確率は非常に低い病気」と指摘し、社会的な偏見による「レッテル貼り」を懸念している。

警察の調べによると、この教師は2018年からうつ病の治療を受けており、この問題で休職したことがある。昨年12月9日には、うつ病を理由に休職を申請したが、20日後に専門医の診断書を提出して復職していた。

こうした事実が明るみに出ると、一部のオンラインコミュニティでは「うつ病の人が教師をしていいのか」「うつ病は罪ではないが、子どもと接する仕事には向かないのでは」「どうして精神疾患を抱えながら復職しようと思ったのか」といった批判の投稿が相次いだ。

だが精神医学の専門家らは「うつ病は他害(他人を攻撃する)リスクが極めて低い病気であり、今回の事件の原因を『うつ病』に求めるのは適切ではない」と警鐘を鳴らしている。

2023年に国民健康保険公団が発表した「うつ病診療患者の現状」によると、2022年のうつ病患者数は100万744人だった。さらに、病院を受診していない潜在的な患者を含めると、国民の5人に1人がうつ病を経験していると推定される。

そのため、うつ病に対する安易な一般化や偏見を助長することは避けるべきだという指摘が出ている。実際、うつ病の患者の多くは、適切な治療を受ければ通常の生活が可能だと専門家は強調する。

ソウル大学病院精神健康医学科のクォン・ジュンス教授は「当該教師がうつ病だったからといって、今回の事件を起こしたとは考えにくい。うつ病の患者は自傷行為をすることはあっても、他人を傷つけるケースはほとんどない」と述べた。

カトリック大学精神健康医学科のイ・ヘグク教授も「うつ病の治療歴があるからといって『うつ病患者は殺人を犯す可能性がある』と決めつけるのは誤りであり、偏見を助長するべきではない」と指摘。「国民の5人に1人が経験する病気である以上、安易な決めつけは禁物だ」と警告した。

さらに、今回の事件によってうつ病への否定的な認識が強まると、潜在的な患者が治療を受ける機会を逃し、症状が悪化する可能性があるとの懸念も出ている。

翰林大学聖心病院精神健康医学科のチョン・ドクイン教授は「精神疾患が知られることを恐れ、保険加入などの不利益を懸念して病院を訪れない人が多い」と指摘。「うつ病への偏見が広がれば、さらに治療を受けない人が増えてしまう」と懸念を示した。

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