
韓国SKグループとアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が共同で進める、韓国初・最大規模のAI専用データセンターが、南東部・蔚山の国家産業団地内で建設の第一歩を踏み出した。2027年の稼働を目指す本プロジェクトでは、使用済みの「冷たい海水」をサーバー冷却に再利用する、先進的な環境技術の導入が検討されている。
10月末、秋風が吹き始めた現地では、基礎工事と地盤打ち込みが進められている。9月1日に着工したこの「SK AIデータセンター・蔚山」は、41メガワット(MW)規模の第1段階が2027年に稼働予定で、最終的には100MWへと拡張される。
このプロジェクトは、SKグループのチェ・テウォン会長が「エネルギー・通信・半導体」に続く第4の成長事業として推進しており、GPU(画像処理装置)を6万枚導入。高密度で多様な演算処理を担うAIサーバーに特化し、液体冷却と空冷のハイブリッド冷却システムを採用する。
SKブロードバンドのインフラ本部長を務めるキム・ジェソク氏は「AI専用として設計されたデータセンターとしては国内最大・初の試み。消費電力が通常のサーバーラックの10倍に達するため、発熱と電力供給の管理が極めて重要」と強調した。
電力供給には三重構造を取り、主電源はSKマルチユーティリティ(SKMU)、補助電源は韓国電力、非常用には発電機を設置するという。
注目すべきは、冷却技術における「環境負荷低減」への取り組みだ。SKグループは、子会社のSKガスと韓国石油公社が共同運営する「コリア・エナジー・ターミナル(KET)」で発生する冷却用の海水を、データセンターの冷媒として再利用する構想を進めている。
KETでは、-162℃の液化天然ガス(LNG)を約20℃の海水で温めて気化させ、天然ガスとしてSKMUに供給。これにより発電し、AIセンターに電力を送っている。LNGを温めた際に生まれる「冷たい海水」は現在そのまま海に戻されているが、これを冷媒として活用することで、冷却エネルギーの再利用と電力使用量の削減、そしてCO₂排出削減を狙う。
SKグループ関係者は「この冷熱エネルギーを再利用する案は現在経済性を精査している。実用化されれば、世界でも類を見ない初の試みになるだろう」と期待を示した。
このデータセンターは、将来的には1ギガワット(GW)規模へ拡張され、東北アジア最大のAIインフラ拠点となることを目指している。再生可能エネルギーの導入や廃熱利用など、AIとエネルギーの両立を模索する“未来型インフラ”として、国際的にも注目されそうだ。
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