2025 年 8月 11日 (月)
ホーム政治北朝鮮韓国政府の相次ぐ融和策、それでも北朝鮮から反応なし…「拙速すぎる」と慎重論高まる

韓国政府の相次ぐ融和策、それでも北朝鮮から反応なし…「拙速すぎる」と慎重論高まる

韓国国防省は8月4日、南北の境界地域に設置されていた対北朝鮮拡声器の撤去作業を開始した=韓国国防省提供(c)news1

韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権が北朝鮮との関係改善を目指し、融和的な措置を矢継ぎ早に繰り出している。だが北朝鮮側からは依然として明確な応答がない。韓国政府が先制的な措置にばかり力を注ぎ、北朝鮮の反応を十分に見極めていないとの懸念も出ている。

イ・ジェミョン政権は発足から2カ月の間に、民間による対北ビラ散布の自制要請、前線地域での対北拡声器放送の中止と撤去、民間の北朝鮮住民との接触全面承認、非転向長期囚の送還検討など、多岐にわたる融和策を打ち出してきた。さらに米韓合同軍事演習のトーンダウンまで検討されている。

しかし、北朝鮮からはこれらの措置に対する明確な反応は示されていない。韓国統一省は7月29日、仁川市江華島の海岸で発見された北朝鮮住民の遺体を板門店を通じて返還する意向を北朝鮮に通告したが、期日までに返答はなかった。遺体返還は実現しない可能性が高い。

イ・ジェミョン政権は「先に動く」戦略で南北対話の糸口を探ろうとしているが、北朝鮮は一部の措置には限定的に応じつつも、全体として沈黙を保っている。拡声器の放送中止には北朝鮮も大音量の対南放送を停止する形で応じたが、それ以外の提案には無関心を装っている。

北朝鮮は2023年末、韓国との関係を「敵対的な二国家関係」と定義。キム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は7月28日、談話の中で、イ・ジェミョン政権の融和策を「前政権と変わらない」と切り捨て、「ソウルでどんな政策が出ても関心はなく、韓国と対話する意志も必要性もない」と明言していた。

こうした状況に、韓国国内では「やみくもな譲歩」との批判が強まりつつある。イ・ジェミョン政権の対北政策は未完成であるにもかかわらず、具体的な戦略構築を経ずに次々と譲歩的措置が講じられている点に懸念が広がっている。

梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「対北政策の骨格が固まっていない段階で先制的措置を重ねるのは拙速だ。戦略を練った上で段階的に政策を展開すべきだ」と指摘する。

さらに、米国との連携を伴わない独自の融和策に対しても懸念が出ている。野党関係者は「ムン・ジェイン(文在寅)政権時代に見られたように、米国との協力なしに進めた対話は結局、失敗に終わった」と述べ、「われわれが譲歩すれば北朝鮮も変わるという姿勢は楽観的すぎる」と批判した。

野党「国民の力」所属の国会国防委員会議員らも「拡声器の撤去は、第2の汚物風船や南北連絡事務所爆破といった形で返ってくる」と警告している。

パク教授もまた、「北朝鮮は現時点で韓国との対話に応じる可能性が低い。こうした時期こそ米韓同盟の強化に注力すべきだ。キム・ヨジョン氏の談話も韓米間の分断を狙い、米国との対話の可能性だけは残している。韓国政府は米国と歩調を合わせた慎重な対応が必要だ」と述べている。

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular