2024 年 10月 12日 (土)
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韓国政府、EV火災防止へ安全管理対策…新築の地下駐車場に「湿式スプリンクラー」推進

仁川のマンション地下駐車場で1日に発生したEV火災現場(c)news1

韓国・仁川(インチョン)のマンション地下駐車場で8月1日発生した火災では、電気自動車(EV)や充電施設に対する火災の懸念が高まった。これを受け、ハン・ドクス(韓悳洙)首相は6日に主催した国政懸案関係閣僚会議で「EV火災安全管理対策」をとりまとめた。これまで消費者に公開されていなかったEVのバッテリー情報を開示し、すべての地下駐車場に湿式スプリンクラーの設置を推進する内容が含まれている。

◇バッテリーメーカー・原材料情報の公開…定期検査項目も大幅拡大

政府は当初、来年2月に国内外の製造業者を対象に実施する予定だったEVバッテリー認証制度を、10月に前倒しし、試験事業として実施することを決定した。

バッテリー情報の公開では、現在開示されているバッテリー容量、定格電圧、最大出力に加え、セル製造業者やバッテリーの形状、主要原材料まで公開項目となった。

仁川の駐車場の火災原因となったメルセデス・ベンツ「EQE350+」について、これまで車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)製バッテリーを搭載しているとされていたが、実際は別の会社のバッテリーが搭載されていたことが明らかになり、バッテリー情報の公開が制度化される必要性が提起されていた。

また、EVの定期検査では、現行の高電圧絶縁状態の確認に加え、セル電圧やバッテリー温度、充電・劣化状態、累積充放電などの検査項目が追加される。韓国交通安全公団の検査所や民間の検査所にも、EVバッテリー診断機などのインフラを拡充する。

バッテリー履歴管理制度は、来年2月から施行する。

◇EV・充電事業者は責任保険に加入義務化へ

さらに、仁川の火災を巡り責任賠償問題が浮上したことから、政府はEV製造業者と充電事業者に対し、責任保険の加入を拡大する方針を発表した。

来年からは、製造物責任保険に加入していない自動車製造業者に対してEV補助金の支給を除外し、製造物責任保険への加入を義務化する方針も追加で推進される。充電事業者についても、火災発生時に効果的に被害を補償できるよう、無過失責任保険への加入を義務化する。これは、今年6月に改正案が発議された電気安全管理法に基づくもので、現在国会で審議中だ。

さらに、国内外の主要自動車製造業者が実施している車両の無償点検を毎年実施するよう勧告し、バッテリー安全管理における企業の責任を強化する。

BMS=現代自動車提供(c)KOREA WAVE

◇BMS「リスク」通知が表示されると消防署に情報を提供

政府は、EVバッテリーマネジメントシステム(BMS)の機能を改善し、ドライバーが火災の危険性を事前に察知できるようにする。

現代自動車や起亜などの主要製造業者は、BMSの安全機能が搭載されていない旧型のEVに対して無償で機能を提供する。また、安全機能が既に搭載されている車両については、無償で性能をアップデートする。

ドライバーがバッテリー異常の兆候を迅速に確認できるよう、主要製造業者はBMS接続および通知サービスの無償提供期間を延長し、車両保険の割引やプロモーションキャンペーンを通じて利用者の拡大を図る。

ソウル市内の地下駐車場にある充電所に掲示された注意事項案内文(c)KOREA WAVE

◇「スプリンクラーがEV火災対応に最も効果的」

一方、政府は地下駐車場での火災発生時にスプリンクラーの迅速な作動が火災の拡大防止に最も効果的だという専門家の意見を受け、安全対策を強化する。

今後、すべての新築建物の地下駐車場には、火災発生時に迅速に感知・作動する「湿式スプリンクラー」を設置することが義務化される。ただし、凍結の懸念がある建物には、性能が改善された「準備作動式スプリンクラー」の設置も許可される。

既にスプリンクラーが設置されている建物については、火災時に正常に作動するかどうかの定期点検を強化し、火災の早期感知と迅速な消火が可能になるよう、火災報知器とスプリンクラーヘッドの交換が推進される。

スプリンクラーが設置されていない小規模建物については、既存の接続散水設備を活用する。

政府は新築建物に対する火災報知器の設置基準を強化し、設置義務対象を拡大する案も検討している。地下駐車場内の熱感知器を早期感知型の煙感知器に交換する案なども検討されている。

スプリンクラーなどの消防設備を故意に遮断・閉鎖する違法行為については厳しく処罰する。仁川の火災でも、初期にスプリンクラーが作動しなかったため被害が拡大したとの分析がある。

地下駐車場でのEV火災発生時の拡大を防ぐため、今後、地下駐車場の内部壁や天井、柱などには防火性能を備えた素材を使用するよう、来年上半期までに建築法施行令を改正する。

電気自動車火災防止デモの様子(c)KOREA WAVE

◇消火カバーなどの消防装備

火災発生時に消防当局が円滑に消火作業ができるよう、政府は来年までに全国のすべての消防署に移動式水槽、放水装置、窒息消火カバーなどのEV火災対応装備を拡充する。移動式水槽は297個から397個に、放水装置は1835個から2116個に、消火カバーは875個から1131個に増やし、性能を継続的に改善する。

民・官協力で軍用技術を活用し、地下駐車場に進入可能な無人小型消防車も年内に開発し、来年から普及させる。

さらに、共同住宅などのEV充電施設の位置や図面に関する情報を消防署に義務的に提供するよう、大気環境保全法などの関連規定を改正する。

政府は今回の対策に加えて、追加の検討が必要な事項については、消防庁や関係省庁が参加する「地下駐車場EV火災安全TF」において年末まで引き続き議論し、改善課題を継続的に見直す。

(c)KOREA WAVE

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