「縄張り争いをするのではなく、患者と医療サービスの向上が大切なのに……」
13日午前に訪れた韓国のある大型総合病院は、朝から慌ただしかった。受付窓口は開く前から患者の列ができ、各科の待合所の椅子は一杯だった。
韓国政府の医学部増員計画に反発し、医師の集団休診が取りざたされている状況について、患者らはため息をついた。
この日、母親と一緒にソウル大学病院を訪れたシンさん(29・男)は「互いに激しく対立するのはどうかと思う。患者がいることが病院の存在理由なのに、本末転倒で苦々しい」とため息をついた。
蔚山(ウルサン)に住む60代の女性、パクさんは心臓疾患でソウル大学病院を訪れた。蔚山にも総合病院があるが、不足している医療インフラのせいで患者が殺到し、通院が容易ではないからだ。
パクさんは「医学部の定員拡大に賛成する。ソウルに行けばセブランス病院だの牙山(アサン)病院だの大きな病院が多いが、比較的大きな都市である蔚山でさえ大学病院が一つしかない。医師の数が増えて地域で診療を受けることができるようになったら良い」と訴えた。
高血圧と糖尿病で新村(シンチョン)にあるセブランス病院を訪れたソン・ミョンチョンさん(63・男)は「医師の方々の考えも理解できるが、この分野に代替可能な人材がいないため、ストライキは心配だ」と話した。
この状況に苦しむのは医師たちも同じだった。政府の強硬的な対応と医師団体に対する批判的世論に押され、どうすることもできない状況が続いているためだ。
大韓専攻医協議会(大専協)は前日、代議員臨時総会を開き、集団行動などの対応策について話し合ったが、非常対策委員会の体制転換以外の総会結果については知らせずにいる。
この日、セブランス病院で会った外傷外科専攻医のAさんは、「大専協会議の結果に従って行動すると思う。当直のときに何度も手術をしなくてはならず大変な仕事だ。人員を増やしたところで、どれほどの医者が外傷外科に来るかは疑問だ」「小児科も外科も仕事が大変で人気がない。結局報酬を上げなければならない」と力を込める。
しかし、大多数の医療関係者は発言を控えている。「どうせ世論は増員に傾き、ここの患者も医学部の定員拡大に賛成するはずだろうから、何も言えない」と口をそろえた。
ソウル大学病院で会ったある医師は「ストライキをしたくても多くの診療が滞っているので、できるかどうかわからない」と嘆いた。
救急医学科所属の医師である30代のBさんは「必須医療人材が増えるという保障があれば医師数の増員に賛成するが、そのような保障もなしに突然2000人を増やすというから、何のための増員なのかよくわからない。大学教育システムもこれを受け入れることができるのか疑問だ」と述べた。
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