
韓国大統領選挙(6月3日)は、史上最多の選挙犯罪者を生んだ選挙として記録されそうだ。
警察庁によると、5月23日現在で摘発された選挙関連の違法行為者は946人にのぼる。選挙ポスターや垂れ幕の破損が最も多く、690人が摘発された。いわゆる「5大選挙犯罪」に該当する者は195人だった。また、候補者への殺害予告投稿は12件、選挙陣営関係者を装った「ノーショー(虚偽予約)」詐欺は50件に達している。「民主主義の祭典」とされる選挙が、さまざまな犯罪で汚されている。
こうした選挙犯罪の急増背景には、極端な政治的対立がある。互いを「敵」と見なす政治的扇動が、熱狂的な支持者の間で暴力行為として表出している。選挙に負ければ自陣営が壊滅するといった危機感を煽る者も少なくない。我が陣営が被った暴力には憤慨し、相手陣営への暴力には沈黙する。大統領候補らも、政策競争よりもあら探しやスキャンダル暴露に注力し、嫌悪の政治を助長している。昨年12月の「非常戒厳」宣布やユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領(当時)弾劾で分裂した世論を収拾しようとする意志は見られない。
警察は4月初旬から全国の警察署に選挙犯罪捜査状況室を設置し、24時間体制で対応している。ポスターや垂れ幕の破損が通報されると、科学捜査班まで出動して証拠を収集する。これにより選挙犯罪対応に多くの警察力が割かれ、現場では人手不足が一層深刻になっている。
防犯カメラが設置されていない場所に掲示されたポスターも多く、捜査の難易度が高いケースも少なくない。本来処理すべき事件や、民間からの請願への対応が遅れ、最終的には市民の被害に帰結する。ポスターを故意に破損した場合、2年以下の懲役または400万ウォン以下の罰金に処されるが、実際にはほとんどが100万ウォン程度の罰金にとどまり、実刑判決はほぼない。「甘すぎる処罰」の見直しも必要である。
選挙犯罪の急増は、対立政治の深刻さを浮き彫りにしている。政界がこの事態に危機感を持たなければ、さらに過激な暴力行為が横行し、対応のための行政資源がより多く投入されざるを得なくなる。
大統領選挙の後には、相手陣営を尊重しながら政策を競い合うという政治の基本に立ち返るべきである。分裂と憎悪の政治が続く限り、政治の発展は期待できない。市民が心から楽しめる「民主主義の祭典」が戻ってくることを願う。【MONEYTODAY ソ・ジヌク記者】
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