
高齢化が進む韓国で、高齢者のための住宅「シルバーハウス」への需要が高まる一方、供給の少なさや制度的限界、事業性の低さが深刻な問題となっている。65歳以上の人口が全体の20%を超え「超高齢社会」に突入した今、その対応が急務となっている。
韓国のシルバーハウスは現在、わずか40カ所、9006戸に過ぎない。65歳以上の人口が1024万人に達する中、供給率はわずか0.1%。これは日本(約2.0%)、米国(約4.8%)などの先進国に比べ著しく低い水準だ。
公的シルバーハウスは低所得高齢者を対象に家賃月10万ウォン(約1万円)以下、保証金300万ウォン(約30万円)以下で提供される。だが、供給が極端に少なく、入居条件も厳しい。反対に、民間の高級シルバーハウスは保証金数億ウォン(数千万円)、月額費用は最大500万ウォン(約50万円)にも達し、中産層には手が届かない。
代表例として、ソウル市江南区「ザ・シグナムハウス」は保証金6億ウォン、月額生活費350万ウォン。広津区の「ザ・クラシック500」は保証金9億ウォン、月額450万ウォンにのぼる。
中間層向けには公的支援付き民間賃貸「シルバーステイ」も注目されるが、導入は始まったばかりで、実際の入居には時間がかかると見られている。
シルバーハウスは基本的に分譲が禁止されており、短期的収益を重視する民間企業にとっては参入のメリットが少ない。さらに、30人以上の収容施設には土地や建物の所有義務が課され、土地取得費用も高騰している。
都市部では「高齢者施設=迷惑施設」とする「ニンビー(NIMBY)」現象も根強く、建設用地の確保自体が困難だ。
専門家らは、中産層が無理なく負担できる家賃で入居可能なシルバーハウスの普及と、医療・福祉と連携した持続可能な高齢者住宅モデルの開発を急ぐべきと提言する。
また、「高齢者専用」ではなく若年層と共存できる「世代混合型住宅(Mixed Generation Model)」の導入も、孤立を防ぐ有効な手段として注目されている。
(c)news1