
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏をめぐる各種疑惑について、特別検察チームが、キム・ゴニ氏が代表を務めていた展示企画会社「コバナコンテンツ」に対する企業の協賛金疑惑や、公認候補選定への介入疑惑などを対象に本格的な捜査に乗り出した。特別検察による強制捜査は政財界に大きな衝撃を与えている。
特別検察チームは7月10日午後開いた定例会見で「コバナコンテンツの展示に企業が贈収賄性の協賛をしたという疑惑について、準備期間中に過去の捜査記録を精査した。今回の特別検察の捜査で疑惑を完全に明らかにする」との方針を示した。
特別検察は、2015年から2019年にかけてコバナコンテンツが主催した展示会(「マーク・ロスコ展」「ル・コルビュジエ展」「ジャコメッティ展」「野獣派名作展」など)に対し、サムスン電子、現代自動車、LG電子などの大企業が協賛したことについて「見返りを期待した不正な資金提供である可能性が高い」と判断し、捜査を開始した。
特に、2019年6月にユン・ソンニョル氏が検察総長に指名された直後に開催された「野獣派名作展」については、当時検察捜査中だった一部企業の協賛が「捜査への便宜提供と見なせる可能性がある」として、特別検察は収賄の構図を疑っている。
さらに特別検察は、展示協賛とは別に「執事ゲート」とも呼ばれる関連事件への捜査にも着手。キム氏の側近で、「執事」と称された人物が立ち上げたレンタカー会社「ビーマイカー(現IMSモビリティ)」に対する異常な大企業投資に着目し、コバナコンテンツの協賛構造と類似しているとみて調査している。
この人物は、2010年にソウル大学経営大学院でキム・ゴニ氏と知り合い、2012~2015年にはコバナコンテンツの監査役を務めた。また、キム・ゴニ氏の母親であるチェ・ウンスン氏の預金残高証明書偽造事件で書類を操作したとして、懲役6カ月・執行猶予2年の判決を受けた。
特別検察は、ビーマイカーが設立と同時にドイツ車ディーラー「ドイツモーターズ」からBMW車50台などの支援を受けていた点や、元幹部の「ドイツモーターズ会長が『『執事』はキム・ゴニ氏の後輩だ』と特別待遇を指示していた」との証言に注目し、背後にキム・ゴニ氏の関与があった可能性を調べている。
このビーマイカーはユン・ソンニョル氏の大統領当選直後、2022年6月に社名をIMSモビリティに変更。資本が毀損状態にあったにもかかわらず、カカオモビリティやHSグループの系列企業、韓国証券金融、新韓銀行、キウム証券などから総額184億ウォンの大型投資を受けた。その結果、短期間で46億ウォンの利益を計上していた。
特別検察は、この異例の資金調達の背後にキム・ゴニ氏の影響力があったとみている。
特別検察は現在、令状の再請求など身柄確保の方策を検討しており、関係企業への強制捜査も予定している。
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