
韓国の化粧品大手アモーレパシフィックは、X線マイクロCT(マイクロコンピューター断層撮影)技術を活用し、化粧品を肌に塗布した際に形成される「化粧膜」の三次元微細構造を、非破壊で定量分析することに成功した。この研究成果は、素材および分析分野の国際的学術誌『Small Methods』の1月22日号で、表紙論文(バックカバー)として採用された。
この研究は、成均館大学新素材工学科のウォン・ビョンムク教授チームと、アモーレパシフィックR&Iセンターのソン・チェヨン首席研究員が共同で進めたもの。これまでメイクアップ製品における「つけ心地」や「カバー力」「持続性」といった使用感は、主に視覚的観察や使用者の主観的評価に頼っていた。しかし、こうした従来の方法では、使用中に発生する化粧膜の微細な構造変化を詳細に把握することが難しく、客観的な分析手法が求められていた。
アモーレパシフィックはこうした課題を解決するため、X線マイクロCT技術を化粧品研究に導入した。この技術に基づき開発された「化粧膜構造3D定量分析技術(INNERLAY™)」は、化粧膜の厚さや均一性、内部構造を三次元で高精度かつ非破壊で解析することを可能にする。
研究チームは数千回におよぶ実験と構造解析を通じ、成分の組み合わせが化粧膜形成に与える影響や、メイクの均一性の違い、乾燥過程での構造的変化、皮膚の凹凸への適応性などを精密に解明した。
さらに、材料の変形率を示す物理量である「ポアソン比(Poisson’s ratio)」の解析を通じ、メイク使用時に感じる「突っ張り」「崩れ」「密着感」といった感覚的な体験を、構造的・物理的な指標と結びつけることに成功した。これは、化粧品の使用感を数値化して捉えるための新たな評価基盤を提示したものと位置づけられる。
開発された技術は製品設計にも直結し、化粧膜の厚さや均一性を最適化することで持続力を高め、肌の凹凸部分でもムラなく仕上がる処方を可能にする。また、テクスチャーの変形挙動を分析することで軽やかな使用感を設計し、肌タイプや年齢層に応じたパーソナライズ処方の実現にも寄与すると期待されている。
アモーレパシフィックR&Iセンターのソ・ビョンフィCTO(最高技術責任者)は「化粧品において最も説明が難しかったのは『感覚』であり、今回の研究はその感覚の根源を科学的データに基づいて解釈し、これまで目に見えなかった化粧膜の微細構造を定量化することで、感性と科学のギャップを埋めた意義ある成果だ。技術革新を通じて、顧客が肌で実感する使用感の違いを最後まで責任をもって形にするという研究哲学を、今後も追求していく」と語った。
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