
米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が、韓国に最新のAI用GPU「ブラックウェル(Blackwell)」を26万枚供給する方針を明らかにした。これは米中に次ぐ世界3位の供給量となり、韓国のフィジカルAI(Physical AI)への転換を後押しする大型提携だ。
フィジカルAIとは、AIが現実世界の物理環境を感知・理解し、自ら動く技術。ロボットや自動運転車、ドローンなど、実世界と直接のインタラクションをになうAI技術の総称。
エヌビディアが韓国をパートナーに選んだ背景には、製造業強国としての韓国の特性が、AIの「物理化」において極めて重要な鍵を握っているとの認識がある。
フアンCEOはかねてより「次世代AI主権はフィジカルAIによって決まる」と強調しており、生成AIや大規模言語モデル(LLM)に続くAIの応用分野として、ロボットや自動運転など物理環境と直接連動するAIの重要性を強調してきた。
韓国政府はこれまでに2030年までに5万枚のGPU確保を目指していたが、今回の供給はその5倍を超える規模で、世界的なGPU争奪戦の中で注目されている。
生成AI分野では米中のテックジャイアントに水をあけられている韓国にとって、このGPU供給は一気に流れを変える契機となる。特にフィジカルAIへの戦略的転換は、日本よりも迅速な展開が可能との見方もある。
韓国は労働者1万人あたりの産業用ロボット台数が1012台で世界1位を誇る「ロボット大国」だ。これまで現代自動車、サムスン、ネイバー、SKなどが積み上げてきた産業用ロボットや自動化技術は、フィジカルAIの学習に不可欠なリアルデータ資産として活用できる。
韓国産業通商資源省は、2028年までに産業用ヒューマノイドロボット用のAIモデルを開発し、2029年から年1000台以上の量産体制に入るという計画を掲げている。
現代自動車は5万枚のブラックウェルGPUを活用し、自動運転・ロボット・スマートファクトリーに対応した統合AIモデルを開発。エヌビディアと総額30億ドルを投じ、応用センターや技術センターを設立予定。
サムスン電子は半導体工場を「デジタルツイン」で仮想化し、歩留まり改善へ。エヌビディアや通信大手と連携し、AIベースの次世代基地局(AI-RAN)技術も開発。
SKグループは製造業向けAIクラウドを構築し、スタートアップや中小企業にも開放。フィジカルAIのエコシステム構築を後押しする。
ネイバークラウドは6万枚のGPU供給を受け、エヌビディアと共同で「現実世界とデジタル空間をつなぐ」次世代プラットフォームの開発に臨む。
フアンCEOは「製造業に強みを持つ韓国が、当社のGPUインフラと組み合わさることで、数兆ドル規模のモビリティ産業を変革する」と強調。韓国のAI企業が“物理世界を理解し、行動するAI”のグローバルリーダーとなることに期待を寄せた。【news1 キム・ミンソク記者】
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