現場ルポ
◇ユン大統領「麻薬との戦争が切実」
麻薬安全企画官は麻薬類の管理強化を目的に2019年5月、食品医薬品安全局傘下の機構として「臨時組織」の形態で設置された。麻薬類指定・流通取り締まり▽麻薬類統合管理システム管理▽各部署間の情報・懸案共有▽政府をまたいだ対策の樹立――などコントロールタワーの役割を遂行している。
麻薬安全企画官については毎年12月、韓国行政安全省がその働きについて評価し、存続の可否を決定してきた。今年も12月、その存廃の是非が問われることになる。
ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は発足当初、「小さな政府」を標榜し、政府省庁の規模を縮小してきた。この流れに従えば、麻薬安全企画官も廃止されるのでは、という懸念が導き出される。これに対し、関連省庁や業界では「正式な組織として認めるべきだ」という意見が続出する。
ユン大統領が10月24日、ハン・ドクス(韓悳洙)首相との会合で「全社会的に麻薬との戦争が切実だ」と宣言、同26日には国務調整室主管の下で麻薬類対策協議会を立ち上げ、麻薬類管理に対するコントロールタワー機能を強化することにした。
こうした傾向をみれば、麻薬安全企画官の維持・定期職制化の可能性も残されている。
食品医薬品安全処の関係者は「麻薬類安全企画官の役割が医薬品安全局に組み込まれる場合、麻薬安全管理業務の効率が低下するだけでなく、専門性や迅速さが落ち、麻薬安全管理業務に“死角”ができるのではないか。そのため、食品医薬品安全処も企画官ポストの定期職制化に向け、政府内の担当部署との協議を進めている」と明らかにしている。
◇国会保健福祉委「むしろ拡大・編成すべきだ」
麻薬安全企画官が設置される前、食品医薬品安全処の役割には限界があった。2018年に構築された「麻薬類統合管理システム」の活用も少なく、新種の麻薬の増加への対応も不十分だった。
だが、企画官設置後は、省庁間の麻薬安全管理政策や管理総括、調整機能が強化された。また、ビッグデータ分析力を高め、システムを活用して麻薬類が適切に処方されているか確認し、必要な捜査を支援するなど、領域も拡大した。
実際、麻薬類統合管理システム約5億5000万件のビッグデータを活用し、麻薬取り締まり摘発率は2019年には38.9%だったのが、今年は68.2%まで高まっている。
麻薬安全企画官が廃止されれば、再び業務の効率が低下する恐れがあるわけだ。
実際、医薬品は薬事法、麻薬類は麻薬類管理法によって管理されている。業務の性格が異なるわけだ。国家的未来の成長エンジンとされる製薬バイオと、深刻化する社会問題である麻薬類という二つの業務を同時並行でこなすのは容易ではない。
野党「共に民主党」のカン・ソンウ委員=国会保健福祉委員会=は「麻薬安全企画官を廃止するのではなく、むしろ麻薬安全コントロールタワーに拡大・編成すべきだ」と主張した。
◇行政安全省「12月末ごろに決定」
食品医薬品安全処は、麻薬安全企画官が定期職制化される場合、麻薬中毒リハビリ支援を担当する「麻薬流通リハビリ課」▽情報分析や立案・調整、国際協力を担当する「麻薬情報課」――を新設し、より体系的な管理に乗り出す計画だ。麻薬の場合、再犯率が36.6%に達し、リハビリや教育などが必要だ。新種の麻薬が急速に拡散するなど国際情報が重要であり、関連業務をより積極的に推進すべきだという立場だ。
行政安全省政府革新組織室関係者は「行政安全省や民間委員による実績評価により、正式な組織として認めるかどうか決めることになる」との認識を示したうえで、その存廃の結論は12月末ごろになる、という見通しを示した。
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