2025 年 7月 20日 (日)
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韓国「産業災害保険」が全労働者対象に拡大へ…安全と財政のはざまで揺れる改革

産業災害事故の犠牲者遺族による集会(c)news1

韓国政府が推進する「全国民産業災害保険制度」と「産災国家責任制」は、すべての労働者に安全な労働環境を保障しようとする政策だ。だが、その裏で制度拡大による財政負担や保険料支払い義務、さらにはモラルハザード(倫理的危機)への懸念も広がっている。

雇用労働省は、2025年から産災保険制度の改編作業に本格着手した。現行では任意加入の扱いとなっている自営業者や芸術家を、制度改正により強制加入とし、業務上の疾病に対する認定期間の短縮、補償時期の前倒しなどが盛り込まれる。

この制度変更により、産災保険の対象者は大幅に増える見通しだが、すべての対象者が歓迎しているわけではない。特に、安定収入のない自営業者や芸術家にとって、毎月の保険料負担が重荷となる可能性がある。

政府はこれを受け、保険料の一部を支援する制度を検討している。現在、中小ベンチャー企業省は、雇用保険の任意加入者である小規模事業主に対し、保険料の50~80%を支援中であり、産災保険も昨年の法改正により支援根拠が整備された。10人未満の事業場に対しては、雇用保険・国民年金の保険料の80%が支援されている。

しかし、加入者数が増えれば予算の負担も大きくなる。当初は任意加入者が少ないため予算も抑えられていたが、強制加入化により約500万人規模の新規加入者が見込まれ、政府の財政支出が一気に膨らむ恐れがある。

また、産災保険基金の財政健全性も懸念されている。同基金は加入者が納める保険料で運営されるため、対象が拡大すれば歳入も増える一方で、支出も増加する。特に業務上疾病への補償が強化されれば、財政収支の悪化は避けられない。

白石大学産学協力団が2024年末に発表した「産災基金の中期財政展望研究」によると、同基金の収支は年々悪化し、2031年には支出が収入を上回る赤字状態に突入、2033年には1兆3912億ウォンの赤字に達する可能性があると試算されている。

これは保険料率を現在の平均1.47%のまま据え置き、支出増加率が現状のまま継続するという前提での予測だ。報告書は「業務上疾病の認定基準が拡大されていることが、基金の支出要因として作用している」と指摘し、「財政の均衡を図るには保険料率の見直しが必要だ」と結論づけた。

(c)MONEYTODAY

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