
2025年4月15日、北朝鮮のキム・ジョンウン総書記が出席した平壌・和盛地区の住宅建設完工式。側近らが多数同行するなか、「影の随行者」として知られるチョ・ヨンウォン(趙甬元)党組織書記の姿は確認されなかった
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の「影の側近」と呼ばれてきたチョ・ヨンウォン(趙甬元)党組織書記が、約1カ月半にわたり一切の公開活動に姿を見せていない。国の最重要行事であるキム・イルソン(金日成)主席の誕生日関連の公式イベントにも不参加であったことから、北朝鮮内での動静にさまざまな憶測が飛び交っている。
党機関紙・労働新聞は16日、キム・ジョンウン総書記が15日に和盛地区3段階・1万世帯住宅の完工式に出席したと報じた。主席誕生日を記念した各種行事の様子も併せて掲載されたが、同紙の写真にチョ書記の姿はなかった。
この式典には、パク・テソン(朴泰成)首相、キム・ドックン(金徳訓)経済書記、チェ・リョンヘ(崔龍海)最高人民会議常任委員長、キム・ジェリョン(金才龍)規律書記、チェ・ソニ(崔善姫)外相、キム・スギル(金秀吉)平壌市党委員会責任書記ら、総書記の側近および関係幹部らが一堂に会していた。
また同日にあった「第14回全国人民体育大会」男子サッカーの試合でも、高官らが主席壇から観戦する様子が報じられたが、これまで主席壇の前列を常に占めていたチョ書記の姿は見られなかった。
チョ書記の最後の登場は、3月1日に報じられた「地方発展20×10政策」に基づく地方工業工場の起工式で、それ以降、北朝鮮メディアでの姿は確認されていない。
北朝鮮では、粛清や失脚、降格の兆候として、幹部がキム総書記の公開活動から外され、国営メディアからも姿を消すケースが過去にも度々見られている。今回のチョ書記の“沈黙”もまた、北朝鮮の権力構図における変化と関連している可能性が指摘されている。
党幹部の人事・評価を総括する組織部門の責任者であるチョ・ヨンウォン書記は、キム総書記の「秘書室長」または「陰の実力者」とまで称される核心人物。2021年には政治局常務委員に昇進し、その後も政権中枢の一角を維持してきた。
また、チョ書記は過去3年間で最も多くキム総書記の公開活動に同行していた側近であり、2018年の南北首脳会談や米朝首脳会談(シンガポール、ハノイ)でも常にキム総書記のそばにいた。
韓国政府関係者は「2025年は朝鮮労働党創建80周年かつ経済・国防5カ年計画の最終年であり、キム総書記から直接任務を受け、特別な任務を遂行中である可能性もある」と慎重に分析している。現時点では、韓国の情報当局もチョ書記の処遇変更に関する具体的な情報は掴んでいないという。
一方、党幹部を対象とした大規模な検閲が進められている可能性も指摘されている。検閲の結果により更迭や謹慎などの処分が下される場合、北朝鮮は党中央委員会会議などを通じて公式に人事異動を発表するものとみられる。
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