
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の最側近として知られるチョ・ヨンウォン(趙勇元)書記が、党内で何らかの懲戒処分を受けている可能性が浮上した。政治的な粛清までは至っていないと見られるが、党の主要職務からは外された状態とみられている。
北朝鮮の複数メディアが伝えたところによると、チョ・ヨンウォン氏は4月22日から26日にかけて平壌で開催された「地方工業工場製品品評会」に姿を現した。しかし、その際に朝鮮労働党の象徴である党バッジを着用していなかった。バッジは、ハンマー・筆・鎌が交差する党マークが刻まれたもので、党の中央委員会所属の幹部にのみ着用が許されているとされる。
通常、党の公式行事や会議には、中央委員会の委員および候補委員(200~300人と推定)がこのバッジを着用する。今回の品評会は厳格な服装規定が求められる場ではないが、他の幹部たちが全員バッジを着けていた中で、チョ・ヨンウォンだけが未着用だった点は注目に値する。
チョ・ヨンウォン氏はこれまで約10年間にわたり、キム総書記の側近中の側近として知られてきたが、2月28日に工場起工式に出席したのを最後に、公の場から姿を消していた。この間、粛清説まで浮上していたが、今回の再登場により完全に失脚したわけではないことが示唆された。ただ、党バッジを着けていないことは、政治的地位の完全な回復には至っていないことを意味する。
韓国・国家安保戦略研究院のキム・インテ研究委員は「党の規約では、軽重を問わず懲戒を受けると職務や党籍に制限が課される。チョ・ヨンウォン氏のバッジ未着用や北朝鮮メディアの報道の扱いから見て、いまだ懲戒中で職務停止状態である可能性が高い」と分析した。
チョ・ヨンウォン氏は、朝鮮人民革命軍創建93周年(4月25日)に関連して開催された新型駆逐艦の進水記念式典、大城山革命烈士陵の献花式、国防省協奏団による音楽舞踊公演などにも姿を見せていない。キム総書記が重視する行事に不参加であった点も、異例といえる。
チョ・ヨンウォン氏は、これら党幹部の規律維持を担う「組織書記」を務めていた経緯から、監督責任を問われて懲戒対象になった可能性がある。
ただし、過去数年間の北朝鮮における高位幹部への処分事例を見ると、チョ・ヨンウォン氏も一定期間の「謹慎」後に再び党の要職に復帰する可能性は否定できない。例えば、首相を務めたキム・ドックン(金徳訓)党経済書記は、2023年の水害に関連してキム総書記から公然と叱責を受けたが、その後に本来の職務へ復帰し、幹部としての地位を維持している。
(c)news1