2025 年 10月 1日 (水)
ホーム社会自己啓発か、自分追い込みか?Z世代が選ぶ“自分強化月間”の光と影

自己啓発か、自分追い込みか?Z世代が選ぶ“自分強化月間”の光と影 [韓国記者コラム]

動画共有アプリ「ティックトック」に投稿された「ロックイン」チャレンジの映像や画像(c)MONEYTODAY

Z世代(1990年代半ばから2010年代前半の生まれ)の間で「The Great Lock-In」と呼ばれる自己啓発チャレンジが急速に広がっている。旅行や外出といった外部要因を自ら遮断し、運動や学習といった特定の目標に集中して取り組む方法だ。ただ一部の専門家は、経済的不安や雇用難といった社会的背景が若者を「自らを拘束する選択」に追い込み、逆にバーンアウト(燃え尽き)を招く危険性を指摘している。

「ロックイン」という言葉はもともとビデオゲームに由来し、キャラクターを選んだ後、そのキャラクターで全てのステージをクリアする過程を意味する。これが転じて、若者の間ではルーティンを固定して目標を達成する自己啓発手法を指すようになった。単に「努力する」という決意にとどまらず、運動アプリへの課金やSNSでの公開など、「逃げ道を断つ」仕組みを作り出すのが特徴である。

動画共有アプリ「ティックトック」では「The Great Lock-In」というハッシュタグの下、個人の目標リストや実践の様子が続々と投稿されている。例えば、1日1万歩以上歩く、水を1日2〜3リットル飲む、午前6時に起床、毎週4〜5回の運動と1回のサウナなどを挙げ、それを実行する映像を公開する利用者も現れている。

ティックトックのクリエイター、ケイディ・クレン氏は米誌ニューズウィークの取材で「ロックインは年末までの4カ月、自分に集中するものだ」と説明した。年末になると決意が失われがちだが、小さな約束を守ることから自己信頼を回復できるという。さらに英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームも「新しい習慣は平均66日で定着する。通常3〜4カ月あれば大きな変化を生みつつモチベーションを維持できる」として、この動きの効果を一定程度認めている。

一方で、こうした流行の背景に不安定な社会状況があるとする指摘も多い。米コロンビア大学経営大学院のジュリエット・ハン博士は米経済誌フォーブスへの寄稿で「2025年の極端な変動性が人々をこうしたチャレンジに熱中させている」と分析している。市場の不確実性、人工知能(AI)による雇用の変化、地政学的混乱などが若者に無力感を与え、目標設定と実行を通じて自信を取り戻そうとしていると述べた。

また米経済メディア「フォーチュン・インテリジェンス」の編集者ニック・リヒテンベルク氏は「Z世代の約半数が精神的な不調を訴えている」とし、職場での孤立や解雇の恐怖を避けようと「常に忙しいふり」をする歪んだ自己管理行動も広がっていると警告する。「ロックイン」方式も真の安定より、ストレスや燃え尽き症候群を固定化させる危険性があるとの見方を示した。【MONEYTODAY チョン・ヘイン記者】

(c)MONEYTODAY

RELATED ARTICLES

Most Popular