2024 年 5月 19日 (日)
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監視カメラ映像のハッキング防ぐスタートアップ

Startup Story ~~ 成功のカギ

SDT ユン・ジウォン代表

©MONEYTODAY

今年はじめ、あるロシアのウェブサイトが世界1万7000個のIPカメラ(ネットワークカメラ)の映像をそのまま生中継して問題になった。この中には韓国の映像が2600件もある。映像には、路上や駐車場、塾の内部、さらに満19歳未満は出入りが制限されるマッサージ店が撮られていた。

このように都心の随所に設置されたCCTV(監視カメラ)によって、24時間、日常をのぞき見られる、という不安が高まっている。

そこで注目されているのが、ハッキングを防ぐ代表的なセキュリティ技術である量子暗号通信。量子の一種である光子(光の最小単位)に情報を入れてデータを保護する技術だ。ハッカーなど第三者が侵入するとデータが破壊されるため、盗聴や傍受を防ぐことができる。

韓国国内のHaaSのスタートアップ「SDT」は、システム構築に必要なハードウェアを提供する。ユン・ジウォン代表によると、同社は最近、韓国科学技術院(KAIST)が独自に開発した量子暗号通信装置技術の移転を受けた。

その一つが「量子鍵配送」(Quantum Key Distribution、QKD)関連装置。これまでのQKD装置は、サーバー1台につき連結できるのがシステム1台だけだった。それがSDTの受けた技術では、サーバー1台でさまざまなシステムを稼動させることができる。

送信部のシステムも安い部品を使用して、商用化が容易になった。加えて、純粋乱数を発生させる量子乱数発生技術と、量子状態を精密に測定する同時係数測定技術の移転も受けた。

同社は3年以内にこれらの技術を適用したCCTV製品を発売する計画だ。「量子暗号通信をベースとするCCTVは絶対にハッキングされない」。ユン代表はこんな自信を持つ。

SDTはほかにも、量子暗号通信技術を適用した企業向けVPN (Virtual Private Network/仮想専用線)やデータストレージ製品なども発売する。

SDTのユン・ジウォン代表©MONEYTODAY

◇物理学と電子工学を専攻

SDTという今年で創業6年目のスタートアップが、有数のIT企業を抜いて核心的な技術移転を受けた。その秘けつは何だろうか。

SDTはHaaSを目指す製造業だ。HaaSはデバイス管制とリアルタイムダッシュボード、機器認証などの機能を、レンガ積みのようにした概念である「モジュール」としたうえ、顧客が希望するモジュールだけを組み立てて提供するサービスを意味する。

同じ機能を持つ製品を作る製造業者とは異なり、顧客のためのオーダーメード型製品を作ることができる。製品供給後も顧客の要請に応じて機能を加えたり除いたりすることも可能だ。HaaSにはハードウェア製造のノウハウとクラウドインフラ(IaaS)、プラットフォーム(PaaS)、サービス型ソフトウェア(SaaS)の技術すべてが必須となる。

ユン代表は、米マサチューセッツ工科大(MIT)で物理学と電子工学を専攻した。当時から、量子暗号と量子コンピューティングが、いつかは新しい技術パラダイムとして定着する、という確信もあった。

創業前、兵役特例としてKAIST量子情報研究チームで勤務し、そこで光子ベースの量子情報研究も進めた。「量子暗号通信商用化には、技術への理解はもちろん、ハードウェア製造ノウハウも必要です。特に国内ではHaaSを指向する企業は私たちが唯一です」。ユン代表はこう強調する。

SDTは現在、韓国国内の主要な重工業企業や公共機関などを顧客にしている。今年の政府国策事業受注と投資誘致を目標にしており、今後、米国や欧州などグローバル市場にも進出する計画だ。

「ソフトウェアからハードウェアまでどんな要望にも応じられる、XaaS(コンピュータ資源をインターネット経由で提供・利用するクラウドサービス企業)としての位置づけられるようになるでしょう」。ユン代表はこう展望した。

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