
高騰する物価と800万世帯に迫る1人世帯の急増を背景に、韓国の外食業界が「ひとり飯」需要を狙った小容量メニューの開発・提供に乗り出している。チキンやピザといった従来の“シェア型”メニューが中心だった市場において、今や「合理的な量と価格で楽しめる1人前メニュー」が大きな存在感を示し始めている。
韓国統計庁によると、2023年時点で韓国内の1人世帯数は約783万世帯で、全体の35.5%を占める。前年より32万7000世帯増加しており、単身世帯は今後さらに拡大すると見られている。
このようなライフスタイルの変化は、外食市場にも直接的な影響を与えている。かつてはチキンやピザなど、大人数でのシェアを前提としたメニューが主流だったが、最近では少量・個食対応のメニューを好む「ひとり飯」ニーズが顕著になってきた。
これに加えて、物価高騰による外食費の負担感も強まっており、外食企業は「少量で合理的に楽しむ消費者層」を新たな市場と捉え、1人用メニューの開発と価格戦略を強化している。
◇キョンチョンチキン・マムスピザ・ドミノまで…各社が1人用で勝負
キョンチョンチキンは最近、1人世帯やひとり飯層をターゲットにした「シングルシリーズ」を発売。看板メニューである「キョンチョンオリジナル」や「キョンチョンレッドオリジナル」などを1人前サイズにし、1人でも気軽に楽しめる仕様にした。
マムスタッチは昨年、1人向けピザブランド「マムスピザ」を立ち上げ、すべての商品を11インチの小型サイズに統一。発売直後から「1人で食べるのにちょうどいいピザ」として話題を呼び、安定した需要を獲得している。
ドミノピザも昨年8月から、低価格で少量の「ハッピーデイリーシングルピザ」5種を販売開始。最も安価な商品は6900ウォンで、価格負担を抑えつつ、複数のメニューを少しずつ楽しめる構成が支持を集めている。
◇単身世帯の消費特性に合った“適量・適価”が鍵
1人用メニューの拡充は、単身世帯の消費行動とも密接に関わる。統計庁によれば、1人世帯の月平均消費支出は約163万ウォンで、世帯全体平均の58.4%にとどまる。支出に慎重な層が多い分、手頃な価格で適切な量を提供する1人用メニューの需要は、今後さらに高まると予測されている。
ある業界関係者は「物価高により外食が心理的に“贅沢”と感じられる今、1人でも手軽に楽しめる小容量メニューの需要が急速に増加している」と述べ、「単身世帯の増加とともに1人用メニュー市場は今後も継続的に成長するだろう」と展望した。
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