
韓国大田市の国家情報資源管理院で9月26日に発生した火災では、職員が消火器で初期消火を試みたが、リチウム電池火災の前では無力だった。国内にはリチウムイオン電池火災専用で国家認証を受けた消火器が一つも存在しないためだ。
2024年に「アリセル工場火災」で23人が犠牲となったことを受け、消防当局は昨年12月に「小型リチウムイオン電池火災用消火性能KFI認証基準」を制定した。しかし2025年10月現在、この基準に基づき認証を取得した消火器はゼロだ。
消防庁と韓国消防産業技術院によれば、現在4社が認証を準備中で、そのうち1社が試験を進めている段階にある。ただしこの基準は総容量1000Wh以下の小型電池を対象としており、より大容量のバッテリー火災には対応できない。例えばAAアルカリ乾電池の容量は約3Whで、1000Whはキャンプ用バッテリー程度に相当する。
リチウムイオン電池は火災発生時に数秒で温度が1000度を超える「熱暴走」が起きやすく、大規模災害に直結する。国家情報資源管理院の火災では、計384個の電池が焼失し、鎮火まで22時間を要した。電池は強固な構造で作られているため、消火薬剤が発火部まで届きにくく、現状では大量の水を浴びせるか水槽に沈める以外に有効な手段はない。
現場のサーバールームにはスプリンクラーの代わりにガス系消火設備が設置され、火災直後に作動した。職員は備え付けのハロン消火器で消火を試み、消防隊もサーバーを守るため水の大量散布は避け、同様にハロン消火器を使用した。しかし約7分後には電池から再び炎が噴き上がった。
市販の消火器の中には「リチウムイオン電池対応」と表示される製品もあるが、いずれもKFI認証を受けていない便法販売品である。認証取得には約2カ月を要するとされる。
韓国消防産業技術院の関係者は「認証制度自体が昨年新設されたためメーカーの申請はまだ多くない。リチウムイオン電池用消火器は危険物を対象とするため、需要も一般の粉末消火器ほど大きくはない」と説明した。
(c)news1