2024 年 11月 10日 (日)
ホーム社会母と一緒に行った町のお風呂が消え…韓国で「遠征入浴」に行く人たち

母と一緒に行った町のお風呂が消え…韓国で「遠征入浴」に行く人たち

全羅北道全州で25年間営業している銭湯(c)news1

「私には銭湯がストレスを解消できる一種の癒しの場所です」

韓国全羅北道全州(チョルラプクト・チョンジュ)のある銭湯の入り口で1月25日に、会ったハンさん(24)が、風呂場のカゴに入った、肌をこすって血液の循環を助けるマッサージ器具を見せながら、このように話した。

ハンさんは小学校1年生の時から今まで毎月第1週の週末ごとに母親と一緒に銭湯を訪れている。幼い時は母親が行こうと言えばついて行ったが、成人になってからはむしろハンさんが先に銭湯に行く準備をする。

母娘は家から5分の距離にある銭湯が最近廃業したので、車で20分の距離にあるここに、いわゆる「遠征入浴」している。

「こうしてまで銭湯を訪れる理由は何か」という記者の質問に、ハンさんは「母親と半身浴をしながら普段話せなかった話もでき、サウナで熱い蒸気を浴びると溜まった疲労が解消されるため、銭湯に行くのが私の日課の一つとして定着して久しい」と話した。

毎日午前7時に孝子洞(ヒョジャドン)のある銭湯に行って「出席チェック」をされるというキムさん(62)も「欠席すれば店主から『何かあったのか』と電話がかかってくる」と笑った。キムさんは「銭湯には温水・冷水といろいろな種類のサウナが備わっており、水圧も強くて洗って出てくると本当にすっきりする。年を取れば血液循環が重要で毎日1~2時間ずつ半身浴やサウナを楽しむ中高年層が多い」と話した。

ハンさんとキムさんの話のように、町内の銭湯は洗うところという以上の意味を持っている。しかし、これ以上ささやかな幸せを味わえない状況が来るかもしれない。経営難に苦しんで廃業する銭湯が増えているからだ。業界では、町の銭湯が近いうちに歴史の中に消えるかもしれないという話まで出ている。

最大の理由は、日増しに高騰する公共料金だ。

韓国都市ガス協会が発表した今月時点での全州市(チョンジュシ)暖房用(商業用)ガス料金は、1メガジュール(MJ)当たり25.7ウォンで、2021年1月(14.6ウォン)と比べると76%ほど上がった。新型コロナウイルス感染事態以後、お客さんが30%ほど減った上に公共料金まで上がると、持ちこたえられない銭湯が相当数あるというのが業界関係者の説明だ。

実際、韓国入浴業中央会によると、昨年時点の全州地域の銭湯は計43カ所で、2020年(54カ所)よりなんと11カ所も減った。

入浴業中央会関係者は「燃料費が安定しない以上、銭湯業主としては運営が難しくならざるをえない。毎年廃業が増えており、このまま行けば銭湯が永遠になくなってしまうこともありうるという気がする」と説明した。

全州のある銭湯のオーナー、イ・ジンソクさん(60代)も「25年間銭湯を経営しながら、こんなに大変なことは初めてだ」と舌打ちした。彼は「3年前には燃料費として毎月2500万ウォン程度支出したが、今は3500万ウォン払っている。お客さんは減り続けているので、従業員一人使うのも負担で家族全員が順番に受付に座っている」と打ち明けた。

だからといって、むやみに料金を上げるわけにもいかない。

イさんは「最近、景気も悪いし、みんな大変じゃないのか。常連客を相手に商売をしているため、簡単に料金を上げることはできず、3年前(8000ウォン)と同じだ」と話した。

キムさん(30・孝子洞)は「コロナ事態以後、衛生問題が重要になったので、人々が銭湯に行くことをためらっているようだ。以前は銭湯に行けば一人で来た人同士が互いに背中も流してくれたし、入浴用品も貸してあげて情を交わすという姿が本当に良かったが、今は家で半身浴を楽しむ人が多くなって、時代の流れとともに入浴文化もどんどん変わるようだ」と話した。

(c)news1

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