2024 年 12月 4日 (水)
ホーム社会歯の治療、あの「耳障りな音」はもうおしまい…韓国スタートアップが「自然歯」作る革新治療

歯の治療、あの「耳障りな音」はもうおしまい…韓国スタートアップが「自然歯」作る革新治療

ステムデン提供(c)MONEYTODAY

「従来の歯科治療パラダイムを覆すことが目標です」

誰もが一度は虫歯の治療を受ける。轟音を立てて回るハンドピースが損傷した歯を削り始めると、苦しい神経治療が続く。その後、金やレジンなど補綴(てつ)物が空いた部分を埋める。これも難しい場合、最初から歯を抜いてインプラントにする。

どちらの治療も歯にとっては死亡宣告だ。歯そのものを抜くインプラントはもちろん、神経治療も同様だ。神経治療は歯の中の血管と神経をすべて掻き出すため、治療後の歯は殻だけが残る。

費用もばかにならない。健康保険審査評価院によると、2022年の歯や支持構造のその他の障害による外来患者数は150万人余り、外来診療費は1人当たり110万ウォン(約12万円)を超える。

◇革新的な治療法

損傷した歯を、神経治療やインプラントではなく、幹細胞活性化方式で蘇らせる革新的な治療法が、韓国スタートアップから出てきた。歯科用新薬開発スタートアップ「ステムデン(STEMDEN)」だ。「理論的には健康な歯を一生維持できる非破壊的な革新治療」。チャン・イルホ代表はこう強調する。

ステムデンの技術は、共同創業者であるソ・ウンジン理事が発表した論文から始まった。釜山(プサン)大学医学部で幹細胞を研究していたソ・ウンジン氏は2016年、博士論文を発表した。幹細胞の薬物反応速度を調節できるという内容の同論文に、米テネシー大学医科学センターのゲボ・ティギ教授が注目した。

「当時、似たような研究を進めていたティギ教授が論文に大きな関心を示した。ティギ教授が韓国を訪れ、当時、釜山大医科大学で研究教授だった私に会ってから、私が釜山大歯科専門大学院准教授として出向き、口腔組織再生に関する共同研究を始めた」

チャン・イルホ氏はこう振り返る。

研究チームは2017~2020年、特定成分である「コンパウンドP」が歯の幹細胞成長を助けるということを発見した。その後、象牙質再生関連の韓国内外の特許出願に成功し、具体的な成果を達成した。実用化の可能性を確認したチャン・イルホ氏は2021年、ステムデンを設立した。

ステムデンのチャン・イルホ(中央)代表と研究チーム=ステムデン(c)MONEYTODAY

◇象牙質再生治療剤

ステムデンはコンパウンドPを利用して象牙質再生治療剤「ピーナッツ1」を開発した。

チャン・イルホ氏によると、損傷した歯に、ピーナッツ1を塗った豆粒ほどのコラーゲンスポンジを入れると、1週間以内に歯髄幹細胞が象牙質の母細胞に変わる。その後、3カ月程度たてば、薬物が作用し象牙質が形成されるという。

象牙質は神経と血管がつながった歯髄腔と根管を包んでいる歯の主要器官だ。また、歯と食べ物が直接触れ合うエナメル質を支持する役割をする。マイクロブタを使った実験の結果、コンパウンドPがついたスポンジを損傷した歯に入れると、スポンジの大きさの70%まで象牙質が再生された。

再生された象牙質の硬さは、自然象牙質の75%水準という結果を示した。

ステムデンは今年、食品医薬品安全処の臨床試験許可に集中する。臨床試験に必要な根拠と資料を準備し、来年に臨床を開始する計画だ。ただし、臨床試験の許可まで相当時間がかかるため、歯の再生関連の臨床始業受託機関(CRO)事業を進める。

(c)MONEYTODAY

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