2024 年 7月 27日 (土)
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患者の「アバター」を医師が診察…「メタバース病院」はできるのか

(写真=gettyimagesBank)©MONEYTODAY

病気の私の代わりに「アバター」をメタバース病院に送る――カタールの週刊ビジネス誌アラビアン・ビジネスなどは、アラブ首長国連邦(UAE)のヘルスケア企業「Thumbay」グループが、メタバース病院を設立すると伝えた。報道によると、Thumbayは10月までにメタバース病院を構築し、患者がアバターを通じて医師と相談できるようになるという計画を明らかにした。

新型コロナウイルス感染に伴い、非対面診療の必要性が言及され、「医療メタバース」に向けた注目度も高まった。海外だけでなく、韓国でもメタバースプラットフォームを活用したり、自主構築したりするなど、業界の動きが出てきている。ただ、まだ合法化に関する議論が進行中であるうえ、非対面診療そのものの実効性にも疑問が残っている状況でもあり、本格化は時期尚早という意見も出ている。

◇海外で活発

医療メタバースサービスを構築しようとする動きは、メタバース市場規模が大きい海外で活発だ。2014年、VRヘッドセット開発会社のオキュラスを20億ドルで買収した米メタ(旧Facebook)は、医療VRアプリケーションの開発に投資している。米医療技術の「ストライカー(Stryker)」も2017年からマイクロソフト社の拡張現実(AR)スマートメガネ「ホロレンズ(HoloLens)」を利用して、外科手術室の設計プロセスなどの改善に乗り出している。

光明病院であったメタバース病院のデモンストレーション(写真=ディープノイド提供)©MONEYTODAY

医療メタバースプラットフォームの構築に積極的に乗り出した韓国の病院もある。中央大光明病院は医療AIプラットフォーム企業「ディープノイド(DEEPNOID)」と手を組み、独自のプラットフォームを開発、メタバースと病院を組み合わせた「メタバースピタル(Metaverspital)」を構築した。

メタバースピタルは、直接、病院を訪問しなくても診療・相談などを受けられるように設計される。1次開発が完了したプラットフォームにはディープノードの医療AIメタバースソリューション「METACL」技術が使われた。ただ、現行の医療法に抵触する可能性があり、診療・相談などのサービスはまだ計画段階に留まっている。

ディープノイド関係者は「段階別に分けて、病院広報や病院内部の診療科位置、手術過程などの案内サービスをまず準備中だ。モバイルやウェブページによるサービスを先行させており、今後、VR機器によって収納から診療まで受けられるようサービスを提供する」と説明している。

同社によると、モバイルサービスモデルは顧客が個人アバターを設定し、相談と診療を受けるようにする予定。サービス日程は未定だ。

ZEPETOの一山(イルサン)CHA病院の外来空間(ZEPETO提供)©MONEYTODAY

◇臨場感のある技術の実現が可能か

一線の病院がメタバースを活用した事例は今回が初めてではない。

韓国京畿道高陽の一山(イルサン)CHA病院は昨年6月、開院1周年を迎え、韓国の病院で初めてネイバー「ZEPETO(ゼペット)」に仮想空間を設置したことがある。病院は「分娩室」「イベントホール(大講堂)」「7階外来空間」「行政事務室」など病院の施設をZEPETOに移した。江東聖心(カンドンソンシム)病院も病院全体を実感コンテンツによるメタバース病院としてイメージ化する事業を進めている。

ただ、非対面診療の合法化議論がまだ現在進行形であり、医療メタバース技術の発展にもブレーキがかかる可能性がある。新型コロナウイルス感染で2020年2月、一時的に非対面診療が認められ、利便性が向上したのは事実だが、診療方法そのものの実効性は疑問だという指摘もある。

ある医療業界関係者は「メタバースプラットフォーム構築にかかる費用問題を現実的に考慮せざるを得ず、サービスを拡張・運営するとしても今の状況では法的問題に広がる恐れがある」とみる。

別の関係者もやはり「メタバースの核心は仮想触感技術(仮想環境で接触物を実際に触るような感覚を起こす技術)だが、空間だけ具体化したからといって実効性を持つことができるのか疑問だ。どれほど臨場感のある技術の実現が可能かによって国内医療メタバース展望が分かれるだろう」と見通している。

◇「対面診療の無視」ではない

サービスの実現もまだ不十分だ。一山CHA病院がZEPETOに設置したメタバース空間も、可能なのは単純なコミュニケーションや案内のみ。今月11日午後2時現在、同病院のメタバースワールドの訪問者数は計30人前後にとどまっている。

病院関係者は「空間は開放されているが、担当者が仮想空間にずっといるわけにはいかず、運営は現実的に難しい。まだ独自のプラットフォーム構築など拡大計画はない」という。

中央大光明病院もプラットフォームは用意されたが、診療・相談のような本格的なサービス運営と関連した部分は明確化できていない。

メタバース産業の発展に伴い、医療界の需要も増加し続けるだろうという見方もある。

ある医療機器メーカーの関係者は「日本や米国、中国、欧州など海外では非対面診療市場が既に爆発的に成長している。半面、韓国は医療法に阻まれている。病院が究極的に追求しているのは、対面診療の無視ではなく、メタバース上の非対面診療と対面診療を並行するシステムだ。デジタル転換が早くなり、ますます医療メタバースの需要は多くなるだろう」と展望している。

©MONEYTODAY

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