韓国特有の「私設救急車」の運転者による乱暴運転など違法行為が相次ぎ、採用基準を高めるべきだという指摘が出ている。
事故などで応急処置の必要な事態が起きた場合、現場から病院までの救急搬送は消防当局が担う。だが韓国ではいったん病院に到着して処置が始まれば、後は患者側が自分で移動しなければならない。
私設救急車は主に最初の病院で治療が難しい重症患者を他の病院に移す時に使われ、患者側が自分たちで呼んで利用する。
各病院を回って自分たちの私設救急車を利用するよう営業する会社も多い。保健福祉省の資料によると、2018~19年に私設救急車で病院を移った患者数は61万人いた。
私設救急車運転手は一種普通免許が必要だ。道路交通法により、安全教育は受ける必要はあるが、オンラインで3時間履修するだけ。119救急車の運転手が専門救助教育を受けるのとは対照的だ。
◇水増しが横行
個人が運営する私設応急移送団は韓国内に140余りある。ソウルのある私設救急搬送団の救急救助士Aさんは「運転手の報酬と処遇が劣悪で、運転手が常に不足している。飲酒運転履歴があっても合格するなど志願さえすれば大部分が働ける」と明かした。
速度違反などの乱暴運転をする運転者は少なくない。仁川の搬送団で働いたことがあるBさんは「患者が乗っていないのに速度を上げたりサイレンをつけたりするドライバーが多い。乱暴運転で後部座席の救助士がけがをしたことも一度や二度ではない」と述べた。
救急車でも緊急時以外のスピード違反や信号無視は違法行為だ。しかし警察関係者は「救急車は救急搬送が目的であり、取り締まりが難しい。特に警光灯を鳴らしている場合、緊急だと考えて取り締まりを控える」と困惑している。
一部の私設応急移送団は、メーターで料金を計算し、手数料を避けるために現金決済を強要する場合がある。Bさんは「患者が料金を正確に知らないため水増しが横行し、現金決済の強要で脱税も発生しやすい」と内情を明かす。
◇準公営制の導入を
私設救急車の運転手が乱暴運転で、市民とけんかすることも。
ソウル市中浪区に住む30代のCさんは最近、私設救急車の運転手を警察に告訴した。運転中だったCさんが子供保護区域に進入して速度を落とすと、ついてきた私設救急車の運転手がクラクションとサイレンを鳴らし、5分間も悪口で威嚇したためだ。当時、救急車は患者を乗せていなかった。
東江大学応急救助学科のパク・シウン教授は「韓国の私設応急移送団は大部分が株式会社形態だ。私設救急車には医師や看護師がいない場合が多く、施設や装備が立ち遅れて危険な時が多い。政府が管理・監督できるようバスのように準公営制を導入しなければならない」と指摘した。
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