
猛暑の影響で「大フリカ(大邱+アフリカ)」とまで呼ばれる韓国・大邱(テグ)の都市中心部で、屋上に植物を植えるだけで気温が最大0.9度も下がるという研究結果が発表された。特に気温が高く、乾燥した条件下では、冷却効果がより顕著になるという。
韓国産学技術学会などによると、国立江陵原州大学環境造景学科のキム・ジェギョン教授のチームとソウル大学環境計画研究所は、大邱市西区の仁洞村一帯を対象に、屋上緑化が都市の熱を和らげる効果を定量分析した。
この地域は盆地地形で夏の猛暑や夜間の高温現象が激しいうえ、住民の多くが気候変動に脆弱な社会層である点から、熱環境の改善が求められてきた。
研究チームは、実際の都市環境と近い仮想3D都市モデルを構築し、建物の屋上に植物を配置する「屋上緑化」が都市全体の温度にどのような影響を与えるかを数値シミュレーションで検証した。
植物は「蒸散」と呼ばれる作用を通じて水分を蒸発させ、周囲の熱を吸収して気温を下げる効果がある。これをコンピュータ上で定量的に再現するため、研究チームは対象地域の約8200㎡を3次元で再現し、計56パターンの気温・湿度条件を入力して解析した。
具体的には、気温33〜40度(1度刻み8パターン)、湿度30〜90%(10%刻み7パターン)という条件下で冷却効果を調査。その結果、気温が高く湿度が低いほど効果は大きく、最も効果が高かったのは気温40度・湿度30%の条件で、都市の平均気温が0.9度低下した。
一方、同じ40度でも湿度が90%の場合は0.68度にとどまり、これは空気中の水分量が多いほど植物の蒸散作用が抑制されるためとみられる。
気温が低く、湿度が高い場合の効果も限定的で、たとえば33度・湿度30%の条件では気温低下は0.62度、湿度90%では0.43度にとどまった。
また、気温が1度上昇するごとに冷却効果は約0.03~0.04度増加し、湿度が10%増すごとに効果は同程度減少する傾向も確認された。
このように、高温・乾燥の気候条件下では、屋上緑化の効果が特に顕著に現れる。これは植物がより多くの水を蒸発させ、熱を効果的に吸収できるためであり、夜間も気温が下がりにくい大邱のような都市において、特に有効な対策といえる。
このシミュレーションには、都市の建物・道路・公園・屋上などを3Dで再現し、それぞれに異なる熱・湿度の影響を与えて都市全体の気温変化を計算するCFD(数値流体力学)技術が用いられた。
研究チームは、屋上緑化以外にも街路樹の植栽や水景施設の設置などもヒートアイランド対策に有効と指摘している。ただ、これらは広い用地や高い設置・維持費用が必要である点がネックになる。
それに対し、屋上緑化は既存建物を活用でき、特に住宅密集地域にも導入しやすいという利点から、都市部での現実的かつ有効な対策として注目される。
チームは今回の研究結果を通じて、都市部の熱波対策に活用可能な基礎データを提示した。特に夏の気温が高く、住宅密集度の高い大邱のような都市では、まず屋上緑化を優先導入し、地域ごとの気温・湿度に応じたカスタマイズ型対策へと展開していくことが効果的だと提言している。
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