2024 年 10月 5日 (土)
ホーム社会厳冬、は毎日が「安否確認」…低所得者が集まるソウルの村

厳冬、は毎日が「安否確認」…低所得者が集まるソウルの村

ソウル・東子洞のチョッパン村の住民たちが寒さを和らげるために集まる店(c)news1

ソウル市龍山区(ヨンサング)東子洞(トンジャドン)には低所得者層の木造賃貸住宅「チョッパン」が数多くある。ここに、住民たちが寒さを和らげるために集まる店がある。

「焼き卵を1つください」「たばこを1箱ください」

住民たちが店に入ってくれば、目にとまる。500ウォン(約52円)の焼き卵(燻製たまご)を一つ選び、5分ほど店内にとどまって、寒さを和らげる。厚いセーターに青いダウンを羽織り、毛糸の帽子をかぶった男が、黙って立っている。

店から5分ほど離れた場所に住むキムさん(40代・女)はこんな話を耳打ちしてくれた。「チョッパンの住民たちはね、こうやって自分たちの安否を知らせているのです」

キムさんは、自身の隣に住む人のことを気にしていた。店にいる人に、その人のことをしきりに尋ねていたのだ。

「ここ数日、会えていない人がいるんです。心配なので、きょう訪ねてみます。あまりにも寒いのでね、どう過ごしているか……」

チョッパン村の掲示板にはこの日、ある住民の訃報が貼られた。

ソウル・東子洞のチョッパン村に住民の訃報が書かれている(c)news1

◇「3日会えていない気がする」

記者がチョッパン村を訪れた日、路地は閑散とし、人の気配が感じられなかった。たばこの煙が“ここに人がいる”ということを知らせてくれるようだ。

「近所のチョンおじさん、見かけた? 3日くらい会ってないと思うんだけど……」

キムさんはこの付近では比較的年齢が若く、性格も気さくな方だ。そんなキムさんの日課に、住民たちの安否確認がある。

ソウル・東子洞のチョッパン村のある住宅。ロープに布団が吊るされ、凍り付いている(c)news1

「ある住民の姿を誰も見ていない、という話があれば、その人の家を訪ねてみる。ここには、いつ、どうなるかわからない境遇の人々がいますからね」

キムさんはこう不安そうに語った。

最近、消息が途絶えている住民がいる。無事かどうかを確認するため、この日もキムさんは外に出た。着いた先は、最大30世帯が住むことのできる3階建ての古い建物だった。

敷居を越え、中に入る。人がいる気配はなかった。手すりにロープをつないで作られた“洗濯干し”には、タオルと布団が掛けられたまま凍りついていた。

「玄関のカギがかかり、靴も置かれてある状態だったら、どうしよう……」。こんな心配を胸に、キムさんは緊張しながら、住民の名前を叫んでドアを何度もノックした。手段を尽くし、中に人がいないことが確認できた。キムさんは、安堵したように息を吐いた。

キムさんとってチョッパン村は「冬に誰かに何が起きてもおかしくない場所」だ。チョッパンの建物を出て、別の路地に向かう途中、ある家の窓を指差し、口ごもった。

「あそこの家で、一昨日、人が亡くなりました」

キムさんは窓に向けていた視線を下げ、しばらく頭を下げた後、「生死を確認しにいく」と言って、隣人の家に足を運んだ。

(c)news1

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