
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が妻リ・ソルジュ(李雪主)氏や娘とともに、江原道元山の葛麻(カルマ)海岸観光地区の竣工式に出席した。北朝鮮最大規模のリゾート施設と“ファーストレディ”のブランドファッションが世界に放たれた今回の行事は、単なる国内向け誇示にはとどまらない複合的なメッセージを含んでいる。
第1に、これは米国に向けたシグナルと考えられる。2018年の初の米朝首脳会談当時、トランプ米大統領は「北朝鮮は海辺に巨大リゾートを建設する力がある」と述べた。この発言は、トランプ氏が北朝鮮への投資に関心を示した証拠とも解釈されており、元山の葛麻海岸に完成したリゾート施設はその構想とほぼ一致する。
第2に、ロシアとの関係誇示という意図が見える。平壌から離れた元山にロシア外交官を招いて竣工式を開催した点からも、依然として北朝鮮の最重要パートナーはロシアであるというメッセージを発信している。また「誰が北朝鮮に観光に行くのか」という疑問に対し、竣工直後にロシアが7月に観光団を派遣すると発表するなど、実利的な連携も見られた。
第3に、大規模施設やリゾート、グッチやカルティエなど有名ブランドで飾られたリ・ソルジュ氏と娘の姿は、対北朝鮮制裁を打破した象徴とされる。「これだけの物資を確保できる我々に、制裁は無力だ」という誇示であり、北朝鮮国内向けには「外部の圧力にも動じない体制の強固さ」を印象付ける狙いもある。
こうした行動の背景には「外部との対話の扉は開いている」「北朝鮮の価値と地位をより高く評価せよ」という意図が読み取れる。
一方、イ・ジェミョン(李在明)政権は現在、対北朝鮮ビラの散布を抑制し、拡声器放送も中止するなど、融和的姿勢を示している。ただ、単なる「対話開始」に期待を寄せる一方的なアプローチは慎むべきとの指摘もある。北朝鮮の変化した戦略と国際的立場を冷静に読み解き、韓国の国益の軸を見極めることが必要だ。
今回の葛麻観光地区の竣工式は、北朝鮮が「何を望み、何を見せたいのか」を象徴的に表した場であった。豪華なリゾートやブランド品の背後にある戦略を見抜く洞察力こそ、いま韓国が持つべき対北朝鮮政策の出発点である。【news1 チェ・ソマン記者】
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