2026 年 2月 19日 (木)
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北朝鮮・金正恩総書記が「訪問6回」…中朝国境に建てた「最大規模の温室農場」の正体

大規模温室農場を視察する北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記=労働新聞(c)KOREA WAVE

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、中国との国境地帯である平安北道・新義州市の威化島一帯に、先端技術を集約した大規模温室農場を造成した。鴨緑江に浮かぶ威化島は中国遼寧省丹東とほぼ接しており、今後の国境再開を見据えた対中経済協力や観光事業の拠点づくりではないかとの見方が浮上している。

◆かつて「新義州経済特区」構想

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2日、新義州総合温室農場の竣工式(1日開催)に、キム総書記が出席したと報じた。キム総書記はこの1年間で6回も現地を訪れており、平壌から約223キロ、専用列車で5時間前後かかる距離を考えると、事業への並々ならぬ関心を示す演出と受け止められている。

温室農場が建設された威化島は、将来的に国境が開かれ、中朝間の経済・観光交流が活発化すれば、価値が大きく高まる立地だ。威化島は、緋緞島などとともに過去には「新義州経済特区」と連動した中朝共同開発候補地として注目された経緯がある。1964年の中朝国境協定により、鴨緑江・豆満江の多くの島が北朝鮮側に帰属し、威化島も北朝鮮領となった。

衛星写真を見ると、島でありながら中国側陸地とほぼ接しており、地理的な孤立度は低い。夏季の洪水被害が頻発し開発が難しかったため長く手付かずだったが、こうした場所に先端型農業施設を集中的に配置した背景には、中国側の理解があった可能性も指摘される。

実際、着工前後には中国要人の関心も目立った。2024年4月、「中朝友好の年」行事で訪朝した趙楽際・全人代常務委員長が江東総合温室農場を視察し、同年7月には国連食糧農業機関(FAO)事務局長の屈冬玉氏が中国の駐北朝鮮大使とともに関連施設を訪れている。

こうした流れから、新義州温室農場は将来、中国向け輸出拠点や観光と結び付く可能性があるとの見方が出ている。韓国・統一研究院のチョン・ウニ研究委員は「交通条件や域内経済規模を考えると、外貨獲得を狙った事業とみるのが自然だ。中国資本が一部投入されたとの話もあり、威化島開発は対中協力を前提にした動きだろう」と分析する。

◆「党大会への忠誠の贈り物」

新義州温室農場は2025年2月10日の着工だ。新義州市下端里と義州郡西湖里一帯、約450町歩(約446万平方メートル)に、温室農場と種子研究・管理を担う「南菜科学研究中心」を併設した。これは中坪・連浦・江東の各温室農場を上回る、北朝鮮最大規模とみられる。公開された完成予想図では、威化島の大部分が農場で覆われている様子が確認できる。

北朝鮮は今回の竣工を、5年に1度の第9回党大会を前にした「最大の成果」と位置付けている。通常6面の労働新聞は8面に増ページされ、そのうち6面を農場建設の成果に充てた。紙面では「青年建設者が党大会に捧げる忠誠の贈り物」と強調し、地方経済発展を誇示することで住民の結束を図る狙いがうかがえる。

同紙はまた、経営管理と生産を一体化する「知能型統合生産体系」や、養魚と野菜栽培を併せた太陽熱温室を紹介し、最先端技術の象徴として宣伝した。

背景には、2024年夏の大規模洪水で新義州一帯に多数の被災者・死者が出たこともあるとみられる。専門家の間では、当時の被害で民心が悪化したとの見方があり、今回の事業を党大会と結び付けて示すことで、地域の不満を抑え込む意図があるとの分析も出ている。竣工式当日、キム総書記が約6万5000人の建設者と記念撮影した場面も、こうした結束演出の一環と受け止められている。

(c)news1

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