2025 年 12月 8日 (月)
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北朝鮮、食糧生産は増加傾向も「平均主義の壁」…圃田担当責任制の限界と模索

2025年10月3日付労働新聞より(c)KOREA WAVE

北朝鮮で秋夕が終わると、農村は一年の収穫を総括し、農場員に実物と現金で収益を分配する「決算分配」に移る。1990年代の経済難以降、こうした行事は長らく報道から消えていたが、ここ2~3年は再びメディアで大々的に扱われており、食糧生産の回復を示す兆候とみられる。

北朝鮮の食糧増産を支えた制度として注目されているのが「圃田担当責任制」だ。これは従来の10~15人単位の分組制を細分化し、個人または3~5人単位が一定の耕地を直接管理・栽培する制度で、国家納入分を除いた残りを労働量に応じて分配できる仕組みだ。

初期には競争的な多収穫運動が広がり、食糧生産が急増したと宣伝されたが、時間が経つにつれ再び「分組管理制」重視の傾向が強まった。韓国統一省は2023年、「農場法」改定により北朝鮮が分組制を再強調し、圃田担当責任制の運用を「柔軟化」したと分析している。

とはいえ、制度自体が消えたわけではない。朝鮮労働党機関誌「勤労者」などでは、依然として担当責任制の「正常化」を訴えており、国家は制度定着を図っている。

制度定着を妨げる最大の要因として指摘されるのが「平均主義分配」だ。これは働きの差を無視し、すべての農場員に同等に配分する慣行を指す。「勤労者」2月号で新川郡党委員会のハン・ナムチョル責任書記は「分配の平均主義は大衆の生産意欲を著しく低下させた」と批判し、働いた分だけ現物・現金を正確に分配するよう党が指導したと明かした。実際、郡内の農場では「現金を農民のチョンソンカード(北朝鮮版プリペイド式チェックカード)にチャージし、透明性を高める」方法も導入されている。

こうした問題は新川郡に限らない。別の責任書記も「生産計画達成を優先するあまり、個々の働きを正確に評価せず平均分配をしてきた」と認めた。努力や成果を反映しない配分は農民の不信を招き、労働意欲の低下をもたらしたという。

もう一つの問題は「収穫量の30%を国家が買い上げ、残りを農場員に分配する」との原則が現場で守られていないことだ。徳川市党委員会のキム・ジョンチョル責任書記は「農場員との約束を守らなかったことが、担当制の成果を阻んだ」と率直に述べている。

その後、党幹部が農場を回り「国家分の納入後は残りを全て分配する」と明言、違反時には党が責任を負うと宣言するなど信頼回復を図った。結果、農場員の意欲は向上し、自費で肥料やビニール資材を購入する事例も出ているという。

北朝鮮は制度の改善を進めつつあり、2025年8月には最高人民会議で「農場決算分配法」を制定。労働日評価と分配を合理化し、農場の物質的基盤を強化することを目的に掲げた。

また、モバイル決済型の「チョンソンカード」を活用した分配や、担当地を毎年交替する「圃田循環制」導入、国家取り分を70%から60%に下げる措置など、農民の不満緩和と実益拡大を狙った政策も試みられている。

それでも依然として「国家の利益の中に単位の利益がある」という集団主義的発想が根強く、分配された食糧の市場流通も厳しく制限されている。このため、制度が一定の成果を挙げても、農場員の実質的収益向上には直結しにくいのが現状だ。

北朝鮮は今後も模範農場の成功事例を宣伝しつつ、現場の柔軟な運用で制度の定着を図る見通しだ。しかし「圃田担当責任制」が実質的な個人農の形に発展しなければ、根本的な限界を抱えたままであるとの見方が支配的だ。

(c)news1

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