
福島第1原子力発電所の処理水海洋放出を批判する韓国の4人組ロックバンド「紫雨林(チャウリム)」のボーカル、キム・ユナさんがこのほど開催したライブで、アンコールを求める観客に向かって「国がやらせてくれない」と発言したことが騒動に発展している。騒音対策に伴う時間制限によりアンコールができないという趣旨の発言とも推測できる一方、海洋放出に理解を示すユン・ソンニョル(尹錫悦)政権を支持する政治家からは「政権批判だ」と非難の声が上がっている。
キム・ユナさんは、処理水放出が始まった先月24日、自身のSNSに「数日前から私は怒りに包まれていた。ブレードランナー+4年、映画的なディストピアが現実になり始めている。放射能の雨がやまず、日も当たらない映画の中のロサンゼルスの風景。きょうのような日、地獄について考える」とつづった。さらに「RIP(Rest In Peace)地球」というメッセージが記された写真を掲載しながら、処理水放出に反対する姿勢を鮮明にした。
この状況のなか、キム・ユナさんは今月3日、ソウルで開かれた「2023レッツロックフェスティバル」に出演した。ラストナンバーを歌った後、アンコールを求める歓声が鳴り響くなか、「国ができないようにしています」と発言した。
この発言を、セヌリ党(与党「国民の力」の前身)の元国会議員のチョン・ヨオク(田麗玉)氏が自身のブログで取り上げ、「現政権に対する批判」と解釈して非難した。チョン・ヨオク氏は「11曲、思う存分、歌った後のアンコールの声に『国がやらせてくれない』と答えたという。“福島怪談”を広めるとは本当にあきれる」と記している。
キム・ユナさんの発言は、騒音防止の観点から政府・地方自治体が公演の時間を制限していると説明する意図とみられる。実際、キム・ユナさんはアンコール曲を、演奏や照明なしで観客とともに歌っている。そのため、一部にはキム・ユナさんの短い発言にチョン氏が過剰な批判を展開しているという見方も出ている。
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