2025 年 5月 1日 (木)
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信じられるのは誰か?変わる解釈、揺れる政治の“正当性” [韓国記者コラム]

大統領権限代行として職務に復帰したハン・ドクス首相(c)news1

昨年12月、韓国国会はハン・ドクス(韓悳洙)首相を憲法裁判官の任命拒否などを理由に弾劾訴追した。ハン首相が当時、憲法裁判官候補のマ・ウニョク氏の任命を拒否したことは「憲法裁判所の機能を麻痺させようとした行為であり、明白な憲法・法律違反だ」と国会側は主張していた。

これに対し、ハン首相は弾劾審理の中で「大統領権限代行は民主的正当性に限界のある暫定的地位であり、憲法裁判官の任命のような積極的権限行使は与野党の合意が必要だ」と述べ、任命見送りを正当化していた。

だが憲法裁判所は3月24日、この弾劾訴追を棄却し、ハン首相は職務に復帰した。4月8日には問題となっていたマ・ウニョク氏を憲法裁判官に任命した。しかし同じ日、ハン首相はさらにイ・ワンギュ法制処長とハム・サンフン高等裁判所部長判事の2人を新たな憲法裁判官候補として指名し、議論が再燃した。

「一時的な地位」として積極的な任命を避けていた首相が、「大統領の専権事項」である憲法裁判官の指名権を行使したことが、法曹界や政界から「手のひら返し」だと批判されている。

とくに、国会が指名した候補者の任命すら「代行の立場では難しい」と見送っていたハン首相が、今度は大統領が持つ指名権まで行使したことで、国会内では大きな反発が起きている。

これを受け、国会は再び憲法裁判所に「権限争議審判」を請求した。ウ・ウォンシク議長は「国民によって選出されていない大統領権限代行が、憲法を守るべき憲法裁判所の構成に関与するのは国家的混乱を招く行為だ」と厳しく批判した。

一方で、野党のこうした対応にも一貫性のなさが見え隠れする。つい最近まで「マ・ウニョク氏を任命して憲法裁の9人構成を整えるべきだ」と主張していたにもかかわらず、今は逆にハン首相の任命行動を「越権行為」と非難しているためだ。

地方裁判所のある部長判事は「本質的には、法律上の明確な規定が存在しないことが最大の問題」と指摘する。つまり、ハン首相と国会の立場は、ともに“法解釈の違い”に基づくものであるということだ。

実際、韓国憲法は大統領が欠けた場合の「代行順序」こそ定めているが、代行者の権限の範囲については具体的に定義されていない。ハン首相と国会は、それぞれの立場から憲法の解釈を使い分けてきた。問題は、その解釈が時と場合によって手軽に覆されている点だ。

必要に応じて都合よく解釈を変える“我田引水”な姿勢に対して、ハン首相も野党も免れ得ぬ批判がある。政治家たちは口をそろえて「憲法と法律に則って行動している」と言うが、その「解釈」が日によって変わるなら、果たしてその言葉に信頼を置けるのだろうか。

政治権力が憲法と法律を都合よく利用するような姿勢こそが、法治主義を損なう最たる行為であることを、政治家たちは肝に銘じるべきだ。【news1 イ・セヒョン記者】

(c)news1

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