
トランプ米政権がビットコインを戦略的備蓄資産として活用する方針を示す中、韓国でもビットコインを外貨準備高に組み入れるべきだという議論が巻き起こっている。しかし、韓国銀行(韓銀)は「ビットコインは価格変動性が極めて高く、国際通貨基金(IMF)の基準にも適合しない」として、現段階での導入は時期尚早との立場を示している。
◇政界・暗号資産業界の導入論
関連業界によると、最近、韓国では暗号資産産業の育成と投資家保護を目的とする「暗号資産基本法」の制定に向けた議論が活発になっている。特に、最大野党「共に民主党」は6日、「トランプ2.0クリプト(暗号資産)金融時代における韓国の対応戦略」と題する政策セミナーを開催し、ビットコインの外貨準備高への組み入れ必要性を提起した。
この背景には、トランプ大統領が大統領選公約として掲げた「暗号資産の戦略的備蓄」があり、米連邦政府は押収したビットコインの一部を戦略備蓄に回す方針を発表している。ただし、追加購入はしないとしている。米国の備蓄資産は原油、穀物、レアアースなどに限定されており、暗号資産の導入は極めて異例だ。
韓国では、民主党のキム・ビョンウク議員が「米国の政策に対応し、韓国も外貨準備にビットコインを組み入れる議論を始めるべきだ」と主張している。暗号資産企業「エクスクリプトン」のキム・ジョンソン代表も「米国がビットコインを準備資産と認めれば、韓国も検討すべきだ」との見解を示した。
現在、韓国の外貨準備高は米国債などの有価証券やIMF特別引出権(SDR)、金などで構成され、即座に換金可能な資産が基本だ。
◇韓国銀行と学界「外貨準備高には不適格」
一方、韓銀や学界は、ビットコインの導入に慎重な立場を取っている。その主な理由は「価格変動性の高さ」と「IMF基準への非適合」だ。
韓銀は19日、ある国会議員の書面質疑に対し、「価格変動が激しく、IMFの外貨準備高基準にも合致しないため、ビットコインを外貨準備に組み入れる議論や検討はしていない」と回答。「慎重なアプローチが必要だ」と初めて公式見解を示した。
外貨準備資産は、必要な時に即座に使用可能でなければならないが、ビットコインは流動性や市場性が不安定で、資産価値や通貨としての分類も不明確だ。また、価格の大幅な変動による換金リスクや取引コストの上昇も懸念される。
韓成大学のキム・サンボン経済学科教授は「暗号資産は資金の出所が不透明で、価格変動が大きく、価値の尺度としての機能を果たさない。通貨として認定されていないものを外貨準備に組み入れるのは無理がある」と批判した。
◇世界的にも慎重姿勢
主要国の中で、ビットコインを外貨準備に組み入れた前例はまだない。チェコは一部資産のビットコイン投資を検討しており、ブラジルでは中央銀行による準備資産への組み入れを提案する法案が提出されたが、欧州中央銀行(ECB)、スイス中央銀行、日本政府はいずれも否定的な見解を示している。
資本市場研究院のファン・セウン研究委員は「ビットコインは価格変動性が極めて高く、外貨準備資産には不適当」としつつも、「米国のように没収資産を戦略的資産として保有する形ならば、別途の国家資産カテゴリとして検討の余地はある」と述べた。
韓銀関係者も「米国が押収したビットコインについては保有するだけで、追加購入をするわけではない。IMFがビットコインを外貨準備資産として認めていない以上、現在の基準で外貨準備として保有するのは時期尚早だ」との立場を強調した。
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