ソウル市は、半地下住宅を直接買い入れるなどの方法で、居住環境の改善を推進する。半地下に「屋塔房」(屋上部屋)や「考試院」(簡易宿所)も加えた「地・屋・考」、バラック・ビニールハウスなどの脆弱な環境に住む階層のための総合対策も打ち出した。
オ・セフン(呉世勲)市長は11月30日、こうした内容を骨子とした「きめ細かな住居安全網拡充総合対策」を発表し、「劣悪な住居に居住する人口が減っておらず、真の対策が必要だ」と強調している。まず「地・屋・考」などの脆弱住宅を、浸水や火災、衛生、犯罪など危険を排除して安全を確保した「安心住宅」に変えていくとしている。
◇半地下
半地下は、ソウル市が直接買い入れ、半地下をなくした住宅に新築したり、整備事業を推進したりして、半地下そのものを減らしていく。買い入れ方式は大きく分けて▽半地下と地上階をセットで買い入れ、地上階を住居脆弱階層に供給する▽住宅全体(多世帯住宅)を買い入れ、新たに住宅を建設する――の2種類。これにより、2026年までに1万6400世帯を供給する計画だ。
新築が難しかったり周辺との共同開発を希望したりする場合には「半地下住宅共同開発」を誘導する。既存の住宅整備事業を活用する方法だ。浸水被害の経験があったり老朽化したりした半地下住宅のうち、民間が共同開発を希望する場合、法定の上限まで容積率を緩和する。
容積率の緩和により、物件が増えれば公共賃貸住宅として買い入れ、既存の入居者に供給する。2023年にはまず20カ所から始め、4年間で計100カ所の整備を目指す。
◇考試院・屋塔房
考試院の場合、安全基準、住居基準を満たした民間所有考試院を「安心考試院」として認証する。老朽化した考試院を買い入れてリモデリングしたり、整備事業で確保した敷地を活用したりして、「ソウル型公共寮」建設も推進する。
屋塔房については、構造・断熱・避難など建築・安全基準に合わせて修理できるよう費用を支援する。住宅修理後にはチョンセ(文末参照)の一部を市が無利子で支援する「長期安心住宅」として運営する。
◇板屋・ビニールハウス
ソウル市江南(カンナム)区の九龍(クリョン)村には依然、板小屋とビニールハウスが残されている。市は、そこに住む約1500世帯が公共賃貸住宅に移住できるよう支援する。相談から住居費、引っ越し費用、生活必需品支援など、すべてのプロセスは「SH住居安心総合センター」が担当する。
住居脆弱階層が保証金を工面できるよう、チョンセや家賃保証金を無利子で支援する制度の限度額も、これまでの「30%以内」から「最大6000万ウォン」まで引き上げた。「1億ウォン以下」の場合は50%までとする。
半地下の居住者が地上階に移住するよう支援する「半地下特定バウチャー」は12月末から支給を始める。
ソウル市は総合対策が持続的に実行されるよう官民協業体系を設けた。ソウル市とSH住居安心総合センターを中心に民間企業、非営利組織などと「同行パートナー」関係を構築し、全過程で協力する。
総合対策実行のために必要な予算は4年間で計7兆5000億ウォン、年平均1兆9000億ウォンだ。オ・セフン市長は「来年度の住居安全網対策の予算は1兆7000億ウォン。今後、組織と人材、予算ともに、しっかり取りまとめていく」と話している。
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ことば チョンセ(伝貰)とウォルセ(月貰)
チョンセは、毎月の家賃の代わりに「保証金」としてまとまった額のお金を預ける韓国独特の賃貸住宅制度。家主はその資金を運用して利益を上げる。借り主は毎月の家賃が不要で、引っ越しの際、保証金は全額戻ってくる。ウォルセは毎月決められた額の家賃を払う契約で、日本での住宅賃貸契約に似た制度。
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