2025 年 5月 21日 (水)
ホーム社会ソウルの職場を辞め20代で始めた「青年食堂」…10年続けられた秘けつ

ソウルの職場を辞め20代で始めた「青年食堂」…10年続けられた秘けつ

「百寿の膳」のチョン・ハンナ代表(c)news1

「3年だけやってみようと思ったのが、もう10年。最初はお小遣い稼ぎのつもりだったけれど、今は私のブランドになった」

韓国全羅北道全州市の南部市場・青年モールには、わずか5坪ほどの小さな食堂がある。屋外テーブルを含めても、最大で20人ほどしか収容できない。看板メニューはキムチとんかつ鍋。他にも丼物やうどんが人気で、季節ごとに旬の食材を使った新メニューも提供する。

規模は小さいが、食事時にはいつも客で賑わい、長蛇の列ができることもしばしば。今では青年モールを超え、南部市場を代表する食堂の一つとして知られている。

この店の名前は「百寿の膳」。オーナーはチョン・ハンナさん(37)。店名は、友人が手料理をSNSに投稿していたアカウント名から取ったという。

2016年、チョンさんはソウルでの会社勤めを辞め、少し休もうと故郷・全州に戻った。そこで友人から青年モールでの創業を勧められ、競争率34倍という難関を突破して出店した。

「最初は3年だけお小遣い稼ぎのつもりだった。それが気づけば10年。『百寿の膳』という自分のブランドを育てる楽しさと誇りが続ける原動力になっている」

開業当初は予想以上に順調だった。南部市場は韓屋村から近く、観光客が多く訪れる。市場の利用客も多く、月8万ウォン(約8000円)という安い家賃も支えとなった。

また、青年モールの活気ある雰囲気も大きな魅力だった。若い起業家同士が協力し、イベントを企画するなど、共同体としての結びつきが強かった。「芸能人を招いたイベントも自分たちで企画していた。その活気がとても良かった」

しかし、そんな雰囲気も徐々に衰退していった。時が経つにつれ、青年モールは次第に低迷し、特にコロナ禍では客足が激減。大きな危機に直面した。

「お客さんが激減し、空き店舗も増えた。あの時が一番つらかった」

それでも新メニューの開発やSNSでの発信を続け、顧客とのつながりを維持しようと努力した。「支えてくれた常連さんのおかげで乗り越えられた」

今も青年モールの再活性化を願っている。「最近は皆、生き残るのに必死で、共同体としての雰囲気が薄れているのが残念。以前のように各店舗が個性を生かして協力し合えば、もっと良くなるのではと思う」

目標は大きくない。「百寿の膳」はお金儲けのための店ではなく、自分のブランドだ。SNSでの発信を続け、1年前からはオリジナル商品のミールキットも販売開始。少しずつ事業を広げている。

「小さな店だけど、私の名前をかけたブランドだから責任感を持って続けたい。もっと多くの人に知ってもらい、愛される店にしたい」

全州市は2011年、文化体育観光省主催の「門前成市」事業に選ばれ、南部市場2階に青年モールを造成。かつて30店舗以上が入っていたが、現在は18店舗が営業中だ。

(c)news1

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