2024 年 11月 7日 (木)
ホーム社会ソウル―釜山を20分で結ぶ「ハイパーループ」は今、どの段階?

ソウル―釜山を20分で結ぶ「ハイパーループ」は今、どの段階?

HyperloopTT Press Kitキャプチャー(c)news1

ソウルから釜山までを約20分で移動するには、時速1000km以上の速度が必要となる。民間航空機の平均速度が時速900km程度であるため、この速度を達成することはできない。この課題に応じて、各国では「ハイパーループ」技術の開発が進められている。

ハイパーループは、車体を磁力で浮上させ、真空に近い低気圧の管内を高速で移動させる交通手段だ。鉄道のように決められた軌道に沿って移動することから、「チューブ鉄道」とも呼ばれる。磁力で浮上することで摩擦抵抗がなくなり、さらに低気圧の管内を移動することで空気抵抗も大幅に減少する。

この技術は既存の高速移動手段の概念に基づいており、以前から研究が進められてきたが、2013年に米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が発表した技術論文で「ハイパーループ」という名称が広く知られるようになった。これ以降、英起業家リチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・グループがこのプロジェクトに投資し、2020年には有人テストも実施した。しかし、このテストでは時速160kmにとどまった。プロジェクトは進展が遅く、2023年にはこれを推進してきた「ハイパーループ・ワン」の運営が中止された。

韓国では、韓国鉄道研究院がこの技術を研究し、ハイパーループの核心である低気圧チューブの国産化に成功している。また、米スタートアップ「ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ(HTT)」やオランダの新興企業「ハルト(Hardt)」、中国で宇宙開発を担う「中国航天科工集団公司(CASIC)」などもハイパーループ技術の実現に挑んでいる。さらに、イーロン・マスク氏が設立した「ボーリング・カンパニー」も関連する実験と開発を進めており、ハイパーループ技術はまだ商業化に至っていないものの、試作段階での開発が続いている。

ハイパーループには「陸上交通を革新する技術」という期待が寄せられる一方で、懐疑的な意見も少なくない。既存の鉄道インフラは国家規模のプロジェクトとして巨額の費用が投じられ、維持費もかかる。だが、ハイパーループは全く新しいインフラをゼロから構築する必要があり、その初期投資は莫大といわれる。また、高速での移動中にシステムトラブルが発生した場合、即座の対処が困難であり、安全確保のための新たな技術が求められている。加えて、広範な土木工事が必要となるため、環境問題のリスクも指摘されている。

ハイパーループ技術の発展にはまだ時間がかかりそうだ。その間に他の交通技術も進化するため、最終的な競争力は将来の技術進展と照らし合わせて判断される。現在、各種ドローンや自動運転車などの技術投資も大規模に進んでいるため、ハイパーループが最終的にどのような位置付けとなるかは今後の展開次第だ。

(c)news1

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