2024 年 6月 13日 (木)
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スタートアップ、すべての革新家たちの方法論

 コラム 

チェ・ハンジブ非営利組織「スタートアップアライアンス《Startup Alliance」センター長)

©MONEY TODAY

彼は音楽家だった。大学生の時、電子音楽のアルバムを出した作曲家だった。また、今日、解雇通知を受ければ、明日、失業者になるクラブの演奏者でもあった。

自らが手掛けたアルバムを通じ、音源ビジネス構造がいかに不合理であるかを悟った。そして、これを解決するため、悩み、実験を始めた。

音源ではない、他の媒体で音楽を伝える方法はないか。音源サービスフラットフォームではない他のチャンネルで、大衆とコミュニケーションを取れないか。SNSを活用した音楽制作と共有、オン・オフラインを結合した創作方法、物を媒介にした音楽演奏インターフェース――さまざまな試みを続けた。

そして人工知能(AI)という新たな「創作の道具」と出会い、サウンドスケープの領域につながった。ある瞬間から彼は「メディア・アーティスト」と呼ばれるようになった。

大衆と通じ合う音楽で、革新的なものを創出しようとした。音によってこの世のすべてとコミュニケーションを図ろうとした。そんな彼が、スタートアップを開始するために私のもとを訪ねてきたのは、彼との初対面から2年がすぎていた2019年だった。

スタートアップが革新と経済成長をリードしている。国内に今年新たに登場したユニコーン企業の価値の推定金額は30兆ウォンを超え、これは国内企業の時価総額で10位圏に入る。

昨年上半期にスタートアップが作り出した雇用は、国内企業平均の3倍を超えるという。韓国ベンチャーキャピタル(VC)協会によると、昨年第3四半期までに新興のコスダック市場に上場した企業70社のうち、43社がVC資金で成長した企業、すなわちスタートアップ出身だ。

スタートアップへの社会的関心も高まっている。

大手企業で十数年間、スタートアップ関連の仕事をしていた時のことだ。苦労したことの一つが「スタートアップとは何か」を説明することだ。社内の関係者に会い、本論に入る前、この説明で疲れ果ててしまった。

地上波の主要ニュースに「スタートアップ」という言葉が説明もなく使われた出したのは数年前だ。新聞記事にはもはや「スタートアップ」に脚注はつかない。世の中のあちこちでスタートアップの製品やサービスの広告に接する。ドラマの素材として登場し、スタートアップ競技会が地上波で中継される。配達員も、タクシー運転手も、美容師も、その従事者だ。

そして世の中は今、スタートアップのやり方に注目している。

スタートアップは、ビジョンを共有する人々が集まり、圧縮された資源を活用して早く成長し、ミッションを達成する組織だ。世の中の問題を定義し、不完全であっても速やかにソリューションを市場に出す。市場で不満が高まる前に素早く改善して正解を探し出し、ファンを作る。このためスタートアップは、それに合う新しい手段・組織を運営し、成長し、固有の組織文化を作る。世の中の変化が速くなり、革新の度合いが高まるなか、従来の企業各社もスタートアップ方式を学ぼうとしている。

「未来を予測する最も良い方法は、未来を作ることだ」と言うではないか。不確実性の時代に未来を作らなければならないのは、ビジネスだけの話ではない。政治、社会、文化、あらゆる面で、世の中に利益をもたらそうとする革新家の方法論として、スタートアップを定義する必要はないだろうか。未来を望ましい方向に導き、価値を生み出す革新家は、増えていかなければならない。

投資・収益の対象、雇用創出のための新たな経済主体、投資誘致金額……。企業価値に基づく話題から離れて、スタートアップを「すべての革新家らの方法論」としてとらえ直す時期に来ている。

作業場から出て自然の姿や色彩を絵に込めたいと考えた画家によって、チューブ入り絵の具が考案され、印象派の時代が切り開かれた。より良い世の中に変えていきたいと思う革新家にとって、スタートアップがチューブ入り絵の具となるだろう。

音楽家だった彼はその翌年、起業し、著名投資会社から資金を受けた。「起業家」という肩書がひとつ加わったが、彼は依然、音楽家でありメディアアーティストだ。そしてスタートアップを通じて世の中の問題を解決しようとする革新家にもなった。そんな彼が語る音楽の話、聞きに行かねば。

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