
圏域別に1、2カ所ある上級総合病院の救急医療センターでは、このような問題点がさらに大きくなる。
軽症患者が集まってしまうことで、集中治療が必要な脳出血・心臓麻痺などの患者が、救急室で死んでいった。2021年に出血性脳卒中(脳出血)で救急救命室を訪れた患者は3万698人いた。救急救命室で急いで診療したが、423人が死亡した。3046人は別の救急室に運ばなければならなかった。また、心停止で救急救命室を訪れた3万2957人のうち64.3%に当たる2万1180人が救急診療中に死亡した。
「重症患者のために作られた圏域別救急センターが、軽症患者に無駄に利用されている。24時間勤務すると、韓国型重症度分類(KTAS)レベル2等級以上の患者は1日に1人か2人は来る。残りは全部3~4等級の患者だ」
慶北大学病院小児救急医療センターのチョ・ビョンウク診療教授はこう嘆いた。
単純発熱が始まり30分しか経過していないのに、上級総合病院小児救急医療センターに入ることができてしまうのが韓国だ――チョ・ビョンウク氏はこう指摘したうえで「応急医療センターではなく、コンビニのような『便宜』医療センターだ」と皮肉った。
◇119番隊員に免責特権を
医療界は、軽症患者が救急救命室を利用するのを自制するよう訴える。重症患者だけを救急室に移送させることができる実質的な対策も要求する。
日本では、集中治療を要する患者と軽症の患者が、建物できっちりと分かれている。救急車の中で患者の重症度分類をし、それに適した救急室に移送する。
韓国も同様のシステムは整っている。「応急医療に関する法律」によると、119番救急救命士は初めて応急患者の重症度を分類することができる。患者の状態を考慮し、救急医療機関に移送しなければならない。
だが、現実的に救助隊が患者の重症度を適切に分類できていないという指摘がある。重症度分類後に移送し、もし判断が間違っていたら、責任と非難が救急救命士に降りかかるからだ。
チョ・ビョンウク氏は「医師ではなく救助士が患者に『あなたは軽症だから町の病院に行け』と言うことはできない。そのように話して問題が発生すれば、患者や保護者が苦情を入れる」と指摘する。
こうしたシステムでは、救助隊が「軽症」と判断しても、保護者が望めば患者や子どもを圏域応急医療センターに移送するしかない。「だからこそ、119番隊員にこれに対する免責特権を与え、彼らの判断で重症でなければ上級総合病院の救急救命室に患者を移送しない、とする制度をつくるべきだ」。チョ・ビョンウク氏はこう訴える。
(つづく)
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